研究課題/領域番号 |
22330092
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研究機関 | 独立行政法人経済産業研究所 |
研究代表者 |
冨田 秀昭 独立行政法人経済産業研究所, 研究グループ, 上席研究員(非常勤) (40570297)
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研究分担者 |
乾 友彦 日本大学, 経済学部, 教授 (10328669)
尾崎 雅彦 大阪大学, 経済学研究科(研究院), 講師 (50470068)
権 赫旭 日本大学, 経済学部, 教授 (80361856)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 企業内教育 / ICT投資 / 電子商取引 / IPO / 生産性 |
研究概要 |
権・金・牧野の研究は確保できた企業内教育や能力開発に関する政府の個票データを利用して、企業内教育が企業の生産性に与えた効果を分析した。分析結果から正社員への教育訓練、特に計画的なOJTを実施する事業所の生産性が相対的に高いことを発見した。金・権の研究は『情報処理実態調査』の個票データと『企業活動基本調査』をマッチングして、日本企業におけるIT投資の動きとその効果を調べ、日本経済でIT化が進まなかった理由を探るために実証分析を行った。分析により得られた結論は以下の通りである。(1)ITサービスの付加価値弾力性は17%から18%である。(2)日本企業におけるIT関連費用の付加価値弾力性は2000年代半ばから上昇する。IT集約度の低下の下で、これはIT投資の収益率の上昇を意味する。(3)日本企業のIT関連費用は2004年以降減少する。IT投資の収益率が高まったにもかかわらずIT投資が減少した原因として、IT要員に対する教育・研修と組織改編などの補完的な資産への不十分な投資が考えられる。補完的な投資を行っている企業ほどIT集約度が高い。また、安・金・権はICT技術の一種である電子商取引が生産性に与える効果について実証分析を行った。購買による電子商取引のみが、他の要因をコントロールしたうえで、TFPレベルと上昇率の双方について、統計的に有意な正の効果を与えている結果を得た。 権はIPOによって企業パフォーマンスが改善されるかどうかについて検証を行った。1995年以前にはIPOを通じてパフォーマンスの改善効果が見られなかったが、1995年以降は統計的に有意ではないものの正の効果が観察された。このような結果は日本の金融システムが変わった可能性を示唆している。 上記の分析結果から、日本経済が失われた20年から脱却するためのカギがICT投資、教育による人的資本の蓄積や新規参入にあると言えよう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度と同様に大規模な政府個票データの申請作業と整理に時間がかかり、分析した一部の研究結果の発表が予定より遅れていることは、残された問題として指摘できよう。
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今後の研究の推進方策 |
プロジェクトの最終年度である25年度は今まで得られた研究結果を海外の学会に投稿しながら、国内外の研究者や専門家を招いて国際ワークショップを開催して結果を報告する予定である。チームごとに、書籍を出版するなどの研究結果をまとめることをしながら、組織改革、ICTと企業内人的資本の間の相互依存関係分析、日米比較分析や労働制度の問題など残されたいくつかの課題について分析していくつもりである。
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