研究課題/領域番号 |
22330097
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
須齋 正幸 長崎大学, 経済学部, 教授 (40206454)
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研究分担者 |
晝間 文彦 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (00063793)
鳥海 不二夫 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30377775)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | GARCH効果 / 人口市場 / 実験市場 / アノマリー / 市場構造 |
研究概要 |
本研究の目的は、金融資産の変動特性として観測されるGARCH効果の源泉が、投資家の情報構造、すなわち、投資家間の資産価格に関する情報の偏在によるものかどうかを分析することであった。投資家自体の心理的バイアスの影響も考慮するために、コンピュータ上に構築した市場、すなわち人口市場と実際の人間が投資ゲームを行う実験市場を利用し、それぞれの結果を比較することで、バイアス等の影響を明らかにすることも目的としている。また、人口市場、実験市場の実際の市場との類似性を確認するために、為替の取引情報を利用したデータを構築し、人工的に発生される価格流列と実際のデータの類似性を検証することとしている。 平成24年度は、これまでに蓄積してきた人口市場の研究を先行させた。具体的には価格情報を有するエージェントの割合の変化が価格形成に与える影響を分析した。またそこで発生された価格流列の変動特性として、どのような条件でGARCH効果が生まれるかを検証した。この研究をベンチマークとして、エージェントの行動特性として、ラーニングを具体的にモデルに導入した。ラーニングを導入する理由は、価格に関する情報格差が生じる理由として、外生的に価格格差が起きうることは予想されるが、投資家のラーニングの能力の差異によっても、情報格差と同じことが生じると考えたためである。取引の経験から学ぶことは、投資家毎に異なる。多くを、また効果的な事項を学ぶならば、結果として投資家に見えない情報を類推する精度は高くなる。これが、情報格差と同じ結果をもたらすと考えた。 情報格差はその程度に関わらず、一定のGARCG効果を生む可能性が示唆された。また、ラーニングもその傾向が確認された。しかし、この段階では、情報格差がその源泉であると確定するまでには至っていない。他の影響を排除して、初めてその可能性が示唆されるものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
人口市場に関しては順調に進んでいるが、学生等を通じた実験市場の研究がやや遅れている。実験については、すでに実績も積んでおり、準備は進んでいるが、平成24年度に予定した実験が、平成25年度に実施することになったために、この評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
人口市場で得られた知見を基にして、実験市場の条件を構築し、本年度、実験を実施する。これによって、人口市場と実験市場の差異を明確にすることが可能となる。実験に採用するための学生が、本来は大学院レベルのファイナンス専攻の学生が望ましいが、条件にあった十分な大学院生が確保できない可能性が高いのが問題である。その際には、学部でファイナンスを専攻するゼミ等に属する学生を採用することで対応する予定である。
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