研究課題/領域番号 |
22330102
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
黒田 明伸 東京大学, 東洋文化研究所, 教授 (70186542)
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キーワード | 貨幣 / 補完性 / 取引 / 季節性 / 空間性 / 国際研究者交流 / 多国籍 |
研究概要 |
4月にロンドン財経学院にて開催された第3回グローバルヒストリー・ヨーロッパ会議においてパネル「地域的貨幣需要と世界的通貨供給」を黒田が主宰し、黒田「小農経済と国際金本位制」、Farley Grubb「英領北米での現物建取引」、Karin Pallaver「19世紀東アフリカ現地通貨」、Catherin Eagleton「ザンジバルの銅貨と銀貨」各報告をえた。貨幣需要の季節性による地域的通貨不足の普遍性ならび世界的連動性が明らかとなった。6月と9月に、ロンドンとパリにて研究打ち合わせを行い、大英図書館、英国立公文書館でアフリカなどでの貨幣流通に関する資料収集をおこなった。2月に東京大学東洋文化研究所にてワークショップを開催。黒田「1935年中国の法幣流通の実態」、加藤慶一郎「幕末伊丹での私札流通」、加藤博「14世紀エジプトにおける貨幣理解」、西村道也「ビザンツ帝国での貨幣使用」、F.Grubb「18世紀北米における紙幣流通の地域性」、Christopher Hanes「金本位制下米国での収穫と金融危機」、Georges Depeyrot「古代から現在にいたる通貨流通の季節性」、Claudia Jefferies「近代初期カスティーリャにおける銅貨流通と季節性」、PatriceBaubeau「フランスにおける銀行券流通の季節性と変化」の各報告、車文珠のコメントを得た。通貨流通の地域性と重層性の世界史的普遍性が鮮明となり、貨幣間の補完性の視点の有効性が共有された。 研究代表者の黒田はスイス・ドイツ・フランスでの5回の招待講演を含む7回の本プロジェクトに深く関連する学会報告をヨーロッパにおいて行った。通貨流通の重層性、小額通貨流通と地域信用の代替性、社会的クラスターへのメゾスコピックな着目といった論点を比較史的に論じた。中国近代での地方の取引の実態がわかる資料集を購入。フィリピンにおける貨幣流通に関する西文英訳などのために謝金を支出。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東日本大震災と原発事故の影響をうけ、国際ワークショップの立案には遅れが生じたが、結果的に計画した規模での会合をもつことができた。黒田がドイツに客員教授として招請されたことも、貨幣間の補完性という論点を欧州においてより広げる機会となった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度前半、黒田がイェール大学に派遣されている機会を利用し、ワークショップを開催することで北米での議論の輪を広げたい。欧州において遂行されている近代初期欧州の地方信用研究、ならびに19世紀銀貨流通の世界的研究との連携の可能性を探りたい。
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