研究概要 |
黒田明伸は7月ステレンボッシュ(南アフリカ)開催の16回世界経済史学会にて部会「匿名的だが多元的な貨幣―単一通貨が支配しなかった理由」を主宰。黒田の「1935年中国に於ける紙幣本位制」もふくめ8カ国から10報告者と1コメンテーターを得た。古今東西をカバーして示した「歴史上通貨は常に不足の傾向にあった」との知見は他の部会でも言及されており相応の反応を得た。 9月には国際会議「世界的視野から再解釈する東アジア経済史」をイェール大学にて開催。1日目「スミス的分業を越えて」は黒田「中国における小農経済と市場の多元性」、谷本雅之「近代日本農家経済における労働配分」、鈴木淳「明治日本と清中国の海軍工廠の比較」、F Drixler「徳川日本における福祉機構の財政基盤」、D Howell「後期徳川日本における小農経済の意味」、E Koll 「民国期中国における経済制度・基盤としての鉄道」の報告とD Botsman (日本史) P Perdue (中国史)からの評論を得た。2日目「世界的視野における東アジア貨幣史」は黒田「中国、日本、そして世界史における貨幣間の補完性」、E Kaske「19世紀中国における捐納と貨幣」、P Baubeau「19世紀におけるフランス紙幣」、D Weiman「恐慌と支払い網の断絶―1893年と1907年の合衆国」、B Theret,「現代連邦政治における財政貨幣間の補完性の貨幣的経験」の報告とN Lamoreaux (経済学), W Goetzmann (経営学), J Guyer (人類学), G Depeyrot (考古学)からの評論を得た。会議を通して農業の季節性などによる市場の多層性と地域性を不断に現す貨幣の多元性との関連、また現金決済志向と匿名的社会関係との相関が浮き彫りにされた。 中国金融史関連の定期刊行物を購入。独文資料英訳と会議報告英文校閲に謝金。
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