過去3年に引き続き、当該課題に関わる問題意識を共有しつつ議論を深めるための国際会議をThe Quality of Moneyの共通テーマの下、12月8日パリ財経学院の協力を得て12報告者2コメンテーターを11か国から迎えて開催した。匿名性と指名性、現地通貨と地域間決済手段の二つの軸から貨幣制度の個性をとらえることができるとの黒田の問題提起に関わり、虚構貨幣、暫時的通貨、植民地紙幣プレミアム、個人信用の通貨化、有利子紙幣、無通貨交換など古今東西の事例を挙げながら議論がなされた。貨幣制度は社会関係と相互規定的な関係にあるということが、これらの議論の基底にある含意である。今後、Character of Moneyと表題を変えて、さらに国際的かつ学際的な進展をはかることが期待される。 黒田はパリとマドリッドの貨幣史の国際会議に招かれ、銅貨の比較史的特性と中国銀両制度の特殊性について報告し、またハーグで開催された現地通貨運動の研究者と実践者による第二回国際補完通貨学会に基調報告者として招待され、貨幣が地域的に自生することが歴史上頻繁に現れていることを紹介し、貨幣の地域性は貨幣というものに根源的に伴うことであることを論じた。 フランス銀行文書館での調査では仏領インドシナ・アフリカでの貨幣使用状況を明らかにする資料の存在を確認した。北京図書館所蔵の雑貨店統泰号の帳簿の調査により19世紀前半の地方の商店が相互に帳簿決済で取引の過半を成り立たせていたことを明らかになった。
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