研究課題
平成22年度では、本研究参加者は組織学習、社会問題解決のプロセス、社会運動論、社会ネットワーク論などの基礎理論に依拠しながら、これまでの理論を展開し、それぞれフィールドでもっているケースをより詳細に調査し、分析していくことにより、理論をさらに発展させた。例えば、組織学習の視点で、本研究は主に岩手県、宮城県の中山間地域における3件の農村女性起業を対象とした調査の分析を行なった。本調査の分析から、農村女性起業の社会的意義と持続可能性を探るうえで、組織学習の観点がきわめて重要であることが示唆された。また、社会ネットワーク論では、中国温州市の農村地域における創業活動の活発化現象の考察を行い、地域のソーシャル・キャピタルのバランスを達成することの重要性を認識してきた。さらに、内部メンバーのブローカー役に注目し、ソーシャル・キャピタルのバランスを達成するための方法とプロセスについての認識を深めた。社会運動論では、本研究参加者は4つの事例(日本では大分県大山町、宮城県内の上品の郷の道の駅、タイではBangplub村のザボン&グリーン・ツーリズム運動とwat-taptimdang村の唐辛子ペーストの女性運動)をさらに調査し、分析結果に基づいて、今後タイや他の東南アジアの国々に採用できるモデルを構築した。また、多様な臨床設定(clinical setting)への応用を目的とし、人間の日常生活における課題解決を研究するという『人間の問題解決の理論(Theory of Human Problem Solving)』理論の研究蓄積が社会企業活動研究における社会問題解決のプロセスの解明に多くの示唆を与えてくれる。Theory of Human Problem Solvingは、人間が自らの課題を解決していくプロセスを意識・問題との対話・解決案の創造・評価という4つの段階で捉えている。人間の問題解決の理論で研究蓄積がされている課題解決のプロセスの理論は社会企業活動の課題解決のプロセスとして応用し、その理論を社会企業活動の研究で発展させていくことができると考えられる。
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ベンチャー・レビュー(日本ベンチャー学会誌)
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The Dynamics of Regional Innovation : The Policy Challenge in Europe and Japan.(Y.Lecler, T.Yoshimoto & T.Fujimoto (Eds.))(World Scientific Publishing Co.Pte Ltd.)
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