最終年度となった26年度は、これまでのまとめを行う方向性となった。本年度、研究をまとめていくのにあたり、ケンブリッジ大学IfM(工学部附置研究所)との研究会と、東京大学経済学部・生産技術研究所との研究会によって、本研究の学術的知見をまとめていったものとなっている。 内容としては、大きく分けて二つの学術知見を得るに至っている。 一つは、製品やサービスの創造プロセスを精査することにより、使い手視点による機能面から見た要望に基づいた価値創造の評価軸について知見をまとめている。これは、これまで工学系がモノをつくる方法論に偏った議論をしてきたことと、経営学が過去の事実の分析に偏った議論をしてきたことに着目し、これから何をつくるべきか、という製品やサービスをつくる根本的な方向性に対して議論を及ぼしたこととなっている。 二つ目は、つくったものをどのように評価し、どのように発展させるかという点について議論したものである。これは、使い手が自分の感じた通りに製品やサービスを使い、自分が欲するモノは独自の機能を見出しながら活用し、自分が興味が無いと感じたものは使用や保存すらしない可能性が出てくることに帰着し、製品やサービスの評価軸の可能性を見出したものである。 議論してきた分野は、主に建築分野、空調機分野、衛生陶器分野、昇降機分野、自動車分野、産業機械分野、家具分野等に広がっており、様々な視点を網羅してきたと考えられる。また、議論に参加した研究者は、工学系(建築学、機械工学、情報工学、都市計画学等)、経済学系、経営学系、社会学系に広がり、また、地域的には日本、英国、米国、仏国、中国、台湾、ブラジル、メキシコなどにおよび、可能な限り偏りのない議論を通して今回の知見を得るに至っている。
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