平成22年は、計画していた研究会を、3回、財団法人国際経済労働研究所の協力を得て実施した。新興国市場として注目されているインド、ベトナム、中国について、それぞれパナソニック、カネカ、旧カネボウのも現地担当者経験者を招いて、企業事例の収集に努めた。それぞれのケースについて、公表許可の有無はあるもの、報告内容についての資料を作成した。研究会では、引き続き、インド、ベトナム、ブラジル、中国等に焦点を当てて、実務でのケースの収集を進めていく予定である。 また、本研究の理論面での貢献を充実させるために、12月の国際ビジネス研究学関西部会において、「グローバル企業の理論に求められる組織能力の視点」というタイトルで報告を行い、学会で、新興国市場を開拓する上で「内部化理論の限界」についての意見を求め、その収集を行った。ここでの議論を踏まえたものを、2011年出版予定の林倬史編著『ゼミナール多国籍企業とグローバルビジネス』(税務経理協会)に収録される「多国籍企業論の再検討―現代多国籍企業の組織能力の視点から」として執筆した。あわせて、カナダヨーク大学のキッピング教授と、本研究の骨子を、理論的に進化させるための共同研究を開始し、カナダ企業の調査、および、意見交換を行った。新興国市場を開拓する日本企業の組織能力の源泉についての理解を促進する枠組みを提示する予定である。
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