研究課題/領域番号 |
22330120
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
山口 隆英 兵庫県立大学, 大学院・経営研究科, 教授 (90272096)
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キーワード | 新興国 / 所有政策 / 内部化理論 / グローバル企業 / ビジネスモデル / モジュール化 |
研究概要 |
本研究は、新興国市場を開拓することに向けて、日本企業がどのような組織能力を身につける必要があるかを探求することを目的としている。この点について、本研究では理論面でのアプローチと、現象面でのアプローチの両面から取り組んでいる。23年度の研究では、特に理論面での研究の進展をみた。多国籍企業の成立は、海外子会社をどのような形で所有するかにかかわって、内部化理論によって説明されてきた。内部化理論では、市場での取引コストが高くなる結果、市場取引を組織階層による取引に置き換え、そのことによって多国籍企業が成立すると考えられた。この場合、多函籍企業は、海外子会社を自社の組織内にとどめ置くために、海外子会社の株式の100%近くを所有することになる。そのことで、市場取引が組織階層による取引に代替される。しかし、新興国市場のように外部環境の不確実性が大きく、組織を維持するコストが高くなる場合、取引コストが発生するとしても市場取引が選択される。ここで、企業が考えなければならない点としては、市場取引で発生する取引コストを市場取引のままで縮小することである。このために多国籍企業の組織は市場取引での取引コスト縮小するための組織能力を身につけなければならない。このような理論研究から、市場取引の取引コストを削減する組織能力を説明することが本研究を進めていくうえで重要な課題であることが認識された。 このような理論研究を深めるために、研究会を開催し、新興国での経営経験のある企業の事例の収集に努めている。23年度に行った研究会において、共栄製鋼のベトナムの事例、ニッタゼラチンのインドでの事例は、上記の理論的な進展を補強する事例といえる。そのほかにもパナソニックのブラジルの事例を含めいくつかの事例が研究会を通じて収集されたが、理論的な解釈が十分に行われておらず、次年度の研究によってさらなる事例分析を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理論研究の部分については研究成果の一部を著書の一部として発表でき、さらに、研究論文を発表できる見通しがたった。しかし、ケース収集の部分で、なかなか研穽会での報告していただいている事例の研究の完成が遅れている。ただし、研究会を年間を通じて開催しており、事例についてアクセスはできており、今後これらの事例を分析していく。
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今後の研究の推進方策 |
継続して研究会の開催を通じて事例の収集を進めていく。そして、必要に応じて調査を行い、事例分析を完成させていく。
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