特許引用数は計量手段として広範囲に利用されているが、本研究では、技術者・審査官の認知空間の限界等に起因する引用分析の歪みの基礎を解明するため、従来になかった分析手法を提案し実施した。計画最終年である本年度は、先行技術認識を引用の形で生み出す定点観測装置として審査官引用を利用し、審査官の認知空間の歪みを計測する方法を実証検定し、いくつかの国際学会で発表した。具体的には以下の通り。 (1)特許協力条約を通じた国際出願に与えられる国際調査報告の引用データと、事後的に各国国内の審査により与えられる引用の対比により、国際的な情報ローカリティを検出する方法を、東京理科大の淺見教授の協力を通じて計量的に実現した。各国の国際調査報告の質の測定方法として利用を一橋大学の国際ワークショップや米国の実証法学会で発表した。また、国際調査報告の作成にあたって、自国内に存在する先行技術、出願人の企業内先行技術や、先に引用された特許と後に引用された特許で形成される引用クラスタなどに影響を受ける結果を得て、中間結果はAsia-Pacific Innovation Conferenceなどで発表した。 (2)国際調査報告と審査官引用の対比により、各国の特許庁における情報収集の質を評価する方法について、我が国特許庁や米国特許商標庁チーフエコノミストなど政策担当者に説明し、手法改善への協力を得つつ、政策応用のための改善アドバイスを得た。 (3)特許引用の実証研究においてルービン因果モデルを応用した計量枠組みを複数パターン試行し、投稿準備を行った。 (4)特許引用に関する研究者群との連絡網として科学文献情報学(Scientometrics)分野への展開を求め、ISSI(International Society for Informetrics and Scientometrics)で口頭発表予定(2015年6月)。
|