研究課題
前年度までの我々の研究から、企業の技術開発における科学の意義は一般に高まっているが、企業と科学との相互作用は局所化する傾向があり、特定の「相互浸透領域」を通じてやりとりすると仮定された。この仮定を基盤とし、一般に企業の技術開発と科学あるいは先行特許との関係に見られる特徴を、データによって具体的に明らかにするため、2つの作業をおこなった。第1は液晶ディスプレイ関連技術に関する分析作業であり、米国特許データを独自に整備し、それを用いて3種類の分析をおこなった。すなわち(1)米国特許の「サイエンス・リンケージ」(=特許1件当たり科学文献引用数)の分析、(2)論文あるいは特許が公開されてから、それが後の特許に引用されるまでの「タイムラグ」の分析、及び(3)科学との結びつきの強さが企業の知的生産性にどのように影響するかの分析、である。個々の断片的な発見事実(finding)には興味深いものがあるが、一例をあげると「アメリカに比べて,日本は産業界の知見を活用して新たな発明を生み出すことに秀でているのに対し,1995年以降に限定するとアメリカは新しい科学の知見を利用して多くの発明を生み出している。」第2はハイブリッド車用ニッケル水素蓄電池の開発に関する調査である。具体的にはトヨタとパナソニック(旧松下電器産業)の共同研究における発明者ネットワーク分析であり、異なる企業を結びつける役割を顕著に果たしている個人(境界媒介者)の存在を統計的に明らかにした。また、この境界媒介者は、幅広い技術分野に及ぶ開発経験を持っていることを特許データベースの分析によって明らかにした。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Discussion Paper Series, Research Institute for Economics & Business Administration, Kobe University
巻: DP2013-11 ページ: pp. 1 - 39.
http://www.rieb.kobe-u.ac.jp/academic/ra/dp/index.html
巻: DP2013-15 ページ: pp. 1-36.