本研究の目的は、体系的な実証データが蓄積されていないユーザー・イノベーションに関する日本の実態について、大規模サーベイを通して把握すると共に、海外の研究協力者による国際的サーベイ・データとの比較を通じて、理論的・実証的に考察を行う。さらには単に実態を把握するだけでなく、国家として先端的にユーザー・イノベーションを促進する政策を実施しているデンマークのフィールド調査を通して、ユーザー・イノベーションに影響を与える政策やその構造についても理論的考察を行う。 そのため、初年度としては、(1)文献調査、(2)調査設計、(3)サーベイ調査の実施、そして(4)政策フィールド調査という計画をたて、以下、その実績を順に説明する。 まず、(1)文献調査については、ユーザー・イノベーションのグローバル・サーベイ研究や、イノベーション政策に関連する研究を重点的に調査し、サーベイ調査の概念構築に反映できた・次に・(2)調査設計については、MITで開催された関連学会OUI Workshop 2010において、最新の研究内容とりわけ他国のサーベイ調査に関する情報を確認し、サーベイ調査の具体的な設計に反映できた。(3)サーベイ調査の実施としては、日本におけるユーザー・イノベーションに関する大規模なサーベイ調査を行うことができた。どのような製品分野で、どの程度の割合でユーザー・イノベーションが起こっているか、そしてユーザーが行ったイノベーションの内容がどのような条件でメーカーや他のユーザーに開示されているかという実態について明らかにできた。さらに計画より進んで、韓国・米国においての同様の調査を実施することができた。最後に、(4)政策フィールド調査については、デンマークに滞在しインタビュー調査を行うことで、デンマークのユーザー・イノベーション政策の実態や、その構造について深く理解することができた。
|