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2011 年度 実績報告書

ハンセン病問題の《集合的な語り》の記録化の追求

研究課題

研究課題/領域番号 22330144
研究機関埼玉大学

研究代表者

福岡 安則  埼玉大学, 教養学部, 教授 (80149244)

キーワードハンセン病 / らい予防法 / 隔離政策 / 無癩県運動 / 差別 / トラウマ / 聞き取り / ライフストーリー
研究概要

本研究は,ハンセン病に対する日本政府の過てる《強制隔離政策》の犠牲者たちが,現在,高齢化とあいつぐ死亡による減少のなかにいる状況を踏まえ,いまを逃すと二度とチャンスはないという焦燥感にかられつつ,当事者とその家族,あるいはこの問題にかかわってきた支援者・専門家などからの《証言》を,ライフストーリーの聞き取りによって,できるかぎり数多く記録することをめざしている。
2011年度は,研究協力者の黒坂愛衣さんやゼミの学生たちと,青森の松丘保養園を1回,群馬の栗生楽泉園を1回,東京の多磨全生園を3回,瀬戸内の長島愛生園を1回,邑久光明園を1回,熊本の菊池恵楓園を2回,鹿児島の星塚敬愛園を3回,奄美和光園を1回,沖縄愛楽園を1回訪問,また,「平家の落人部落」として名高い宮崎県椎葉村がハンセン病者を差別しなかった村と聞き,そこも訪問し,精力的に聞き取り調査を実施した。この1年間で,あらたに「入所者」27名,「退所者」7名,「家族」2名,現職の副園長1名,元看護婦1名,弁護士1名,からの「聞き取り」を実施した。2003年にこの調査を手がけ始めてからの総計では,当事者・関係者からの聞き取りは250人に達した。
同時に,聞き取りの音声おこしと語りの編集も精力的に進め,本人による原稿確認も着実に進めている。その一部は,『生き抜いて サイパン玉砕戦とハンセン病』(創土社)として刊行したほか,大学院の紀要『日本アジア研究』に公表した。なお,『生き抜いて』の本は,『朝日新聞』西部本社版,2011.11.24朝刊に,「玉砕戦 今こそ伝える/サイパンの経験半生が本に/ハンセン病回復者の有村さん/復員後差別で生活困窮も」の見出し記事,5段組みで,大きく取り上げられた。社会的な関心の高い問題ゆえと思われる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

9.研究実績の概要で述べたとおり,「聞き取り」調査は順調に進展している。ただ,なにぶんにも,大量の聞き取り録音を,自分たち自身で「音声おこし」をしているので,そうそう,アッという間に,作業が終わるというわけにはいかない。また,膨大な「聞き取りの記録」を,これから,どう出版していくのかについて,その資金の当てがあるわけではないので,そのへんがこれからの難問である。

今後の研究の推進方策

これからは,新たな「聞き取り」よりも,聞き溜めた録音の「音声おこし」を丁寧に作成し,それをもとに「読めるものとしての記録」の作成,そして,本人による原稿確認・公表の了承をいただくことに,作業の重点は移行する,その作業をするために各地の療養所に出向いたときに,新たに語ってくださる方が見つかれば,さらに聞き取りを箋施していく。
また,この機会に,韓国のソロクトのハンセン病療養所での聞き取り調査も実施し,視野を広げたい。
とりあえず,本年中に,家族の立場でこのハンセン病問題で苦労を重ねたひとたち12名(男女6名ずつ)の語りをもとに,『裂かれた絆-ハンセン病と家族』(仮題)を出版する。ついで,療養所を単位とした分厚い「証言集」の刊行を急ぐ。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (5件) 学会発表 (2件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 裁判のおかげで失われていた記憶が蘇った--あるハンセン病家族からの聞き取り2012

    • 著者名/発表者名
      福岡安則・黒坂愛衣
    • 雑誌名

      埼玉大学大学院文化科学研究科博士後期課程紀要『日本アジア研究』

      巻: 第9号 ページ: 75-118

  • [雑誌論文] 32年間失っていた声を取り戻して--ハンセン病療養所「星塚敬愛園」聞き取り2012

    • 著者名/発表者名
      福岡安則・黒坂愛衣
    • 雑誌名

      日本アジア研究

      巻: 第9号 ページ: 119-133

  • [雑誌論文] ぼくは治療に来たんだと,患者作業を拒否--ハンセン病療養所「星塚敬愛園」聞き取り2012

    • 著者名/発表者名
      福岡安則・黒坂愛衣
    • 雑誌名

      日本アジア研究

      巻: 第9号 ページ: 135-152

  • [雑誌論文] 明日があるつもりへ鮭を食べのこす--川柳作家・中山秋夫小論2012

    • 著者名/発表者名
      高鶴礼子・福岡安則
    • 雑誌名

      日本アジア研究

      巻: 第9号 ページ: 173-184

  • [雑誌論文] 控訴断念の時,みんなに抱きしめられた人--西トキエさんの話を聞いてし2011

    • 著者名/発表者名
      福岡安則
    • 雑誌名

      菊池恵楓園入所者自治会機関誌『菊池野』

      巻: 通巻第670号 ページ: 8-16

  • [学会発表] 「怒りの語り」と「感謝の語り」--「癩/らい予防法」体制とは何であったのか2011

    • 著者名/発表者名
      福岡安則
    • 学会等名
      第84回日本社会学会大会
    • 発表場所
      関西大学
    • 年月日
      2011-09-18
  • [学会発表] 「共感的理解」と「多事例対比解読法」--ひとつの方法論としてのライフストーリー聞き取り2011

    • 著者名/発表者名
      福岡安則
    • 学会等名
      第27回日本解放社会学会大会
    • 発表場所
      弘前大学
    • 年月日
      2011-09-03
  • [図書] 生き延びて サイパン玉砕戦とハンセン病2012

    • 著者名/発表者名
      福岡安則・黒坂愛衣(編著)
    • 総ページ数
      189
    • 出版者
      創土社

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公開日: 2013-06-26  

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