研究課題/領域番号 |
22330163
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研究機関 | 奈良大学 |
研究代表者 |
中野 正大 奈良大学, 社会学部, 教授 (70039783)
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研究分担者 |
宝月 誠 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (50079018)
加藤 一己 愛知大学, 文学部, 准教授 (10214363)
高山 龍太郎 富山大学, 経済学部, 准教授 (00313586)
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キーワード | 方法論 / シカゴ学派 / モノグラフ / 社会調査 / 社会学史 / エスノグラフィ / 質的調査 / 知識社会学 |
研究概要 |
研究代表者を中心に「シカゴ社会学研究会」を年3回を開催した。昨年度に引き続き「モノグラフにおける方法論の適用状況」について検討を深めると同時に、W.I.トマス『不適応少女』などの「新たなモノグラフの検討」を進め、「シカゴ学派の創造性に関する知識社会学的探究」の一環として「人種とエスニシティ」という当時の社会的文脈の検討をおこなった。 シカゴ学派が研究の前提としている社会は、民族を始めとする異質な文化が狭い空間に密集している都市社会である。シカゴ学派の大きな発見は、多数の異質な文化が空間的な布置として表現できるという「文化の空間的な視覚化」であり、この視角によって「異質な文化の出会いと相互作用、および、そこから生じる新たな社会的コントロール」という社会学的な課題が明確なものとなった。都市は、異質な文化の出会いによって社会解体を引き起こすと同時に、社会的再組織化によって新たな社会制度を生み出す革新的な空間である。シカゴ学派が得意とするモノグラフは、この課題にもっともよく応える方法として形づくられたと考えられる。この方法は、研究対象である都市の全体像について因果や機能の言葉でストーリーを展開し、こうしたマクロなストーリーの個々の部分について人びとの活動の多様な選択肢とその選択過程を記述する方法と位置づけられる。すなわち、モノグラフとは、科学の言葉である定式知に、社会を営む人びとがもつ生活知や暗黙知を組み入れて、社会学的なリアリティを構成する方法といえる。シカゴ学派社会学の多産性は、移民の流入による異文化の頻繁な接触という社会的文脈、異質な文化の出会いが生み出す革新性という社会学的課題、さまざまな水準の知を統合して対象社会の全体像を包括的に明らかにするモノグラフという社会学的方法があいまって可能になったと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
定期的に研究会を開催し、研究知見を共有することで、おおむね順調に研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでどおり研究会を開催し、研究知見の共有を図っていく。平成24年度は最終年度にあたるので、新しい社会学の方向性について具体的な提言ができるように、より緊密な研究者間の議論と交流を図っていく。
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