研究課題/領域番号 |
22330165
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
種田 博之 産業医科大学, 医学部, 講師 (80330976)
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研究分担者 |
蘭 由岐子 神戸市看護大学, 看護学部, 准教授 (50268827)
中塚 朋子 奈良女子大学, 人間文化研究科, 博士研究員 (50457131)
本郷 正武 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (40451497)
南山 浩二 静岡大学, 人文学部, 教授 (60293586)
山田 富秋 松山大学, 人文学部, 教授 (30166722)
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キーワード | 薬害エイズ / リアリティの多様性 / 血液事業 / 血液製剤供給者 |
研究概要 |
本調査研究は、非加熱血液製剤によるHIV感染被害事件(いわゆる「薬害エイズ」事件)に関する先行の社会学的研究の成果(例えば課題番号:19330122など)を継続・発展させ、「薬害エイズ」問題に関する従来のステレオタイプ化された表象の再考を、言い換えれば「薬害エイズ」の多声的記述(当事者たち-医師・血友病患者・その家族・製薬会社など-の様々な「リアリティ」についての記述)を、当事者への聞き取り調査や様々な関係資料の分析から目指すものである。あわせて、日本の血液事業をめぐる血液の安全性についても考察する。本年度の本調査研究では、とくに「血液製剤供給者(日本赤十字社など)」に対する調査を実施した。得られたデータから、以下のことが明らかになった。第1に、1980年代前半、血液製剤供給者にとって、いかに血液を確保するのかということが眼前のさしせまった問題であった。第2に、血液製剤供給者はエイズに対して危機感を抱いていなかった。第3に、血液製剤供給者は転用血の処理問題を抱えていた(例えば新鮮凍結血漿からクリオプレシピテートを製造すると、転用血が増える可能性があった)。第4に、血液製剤の適正使用に関して、旧厚生省、医療機関(医師)、そして血液製剤供給者とは必ずしもきちんとしたコミュニケーションがとれていなかった(血液製剤供給者は医療機関の需要に応える必要があり、医療機関に対し適正使用を啓発しづらかったようである)。これらのことから、血液製剤供給者は様々なアンビバレンツな状況に陥っていたことが見えてきた。また、世界血友病連盟国際会議にも参加し、資料収集をおこなった。こうした資料収集ならびに資料の検討を通して(国際比較を通して)、「薬害エイズ」をはじめとする「血液の安全性」の問題についての論点(日本固有の問題か否かなど)を明確にすることができると思われる。
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