研究課題/領域番号 |
22330166
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
武川 正吾 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (40197281)
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研究分担者 |
下平 好博 明星大学, 人文学部, 教授 (40235685)
藤村 正之 上智大学, 総合人間学部, 教授 (00190067)
河野 真 兵庫大学, 生涯福祉学部, 教授 (10186629)
安里 和晃 京都大学, 文学研究科, 特定准教授 (00465957)
菊地 英明 武蔵大学, 社会学部, 准教授 (40415823)
金 成垣 東京経済大学, 経済学部, 専任講師 (20451875)
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キーワード | 社会政策 / 東アジア / 比較福祉国家 / オリエンタリズム / 福祉レジーム / 共通社会政策 |
研究概要 |
本課題では、東アジア比較社会政策研究において地域統合との関連で、(1)段階論、(2)体制移行、(3)共通政策の視点が必要となるという認識のもと、当該地域における福祉レジームの実態把握と分析を行うことを目的としている。本年度は、22年度の研究成果をふまえて下記の課題に取り組んだ。(1)東アジア福祉レジーム分析に,ソーシャルクオリティ・アプローチを組み込むことが有幼であることを明らかとなった。(2)共通社会政策の導入の可能性を探るために、ユーロ危機に直面する欧州福祉国家がいかなる問題に直面しているのかを明らかにした。(3)日本国内においてケア労働に従事する外国人住民、EPA来日者に対してフォーカスグループディスカッションを実施し、彼女らの就労の状況、ケアに関する感想などについて聞き取りを行った。(4)イギリスの低所行者向け所得保障の改革動向を分析し、そこから共通政策や日本の改革への了唆を待た。(5)韓国などの後発福祉国家における雇用保障政策と社会保障政策のあり方が、西欧諸国とは異なることが明らかとなった。(6)韓国と日本の福祉政治のアジェンダがプロ福祉・アンチ福祉の点で,2000年代前半・後半・10年代初頭の3時点でずれており,東アジアモデル論が当てはまらないことが再確認された。(7)ノルウェーとの比較の結果,東アジアと北欧双方とも社会的企業などの発達が観察されるが,市民社会と福祉国家との関係性がそれぞれのレジームで異なっていることが明らかとなった.これらの成果については、合宿研究会で意見交換し、ゲスト講師から、韓国の社会的企業の動向,子供のウェルビーイングの国際比較について報告を受けた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通りに成果発表がなされており、共通政策、ケア労働者の移動、段階論といった視点から東アジアにおける社会政策のあり方の検討を行うことができた。これは東アジアのオリエンタリズム的視点を相対化するうえで当初の目的にかなった重要な貢献であると考えられる。ただし、分担者間の議論については不足しており、東アジア社会政策についての新しい分析枠組みが完成するまでには至っていない。当初の計画以上とは言えないものの、おおむね順調な進行であると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
課題として挙げたように、分担者が行った研究成果について分担者間での議論が十分でないため、今後は、各研究者が明らかにした点を総合化する努力が必要となる。そのため、本年度は、分担者間でより密に意見交換を行い、それぞれの成果を互いの研究に織り込んでいくことが必要になる。さらに、これまでは日本国内の歴史的推移およびジェンダー的な視点を織り込んだ分析の視座は十分に組み込めていなかったが、この問題点を補うため、各分野を専門とする研究分担者を新たに招き、研究成果の充実に努める。
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