研究課題/領域番号 |
22330174
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研究機関 | 花園大学 |
研究代表者 |
三品 桂子 花園大学, 社会福祉学部, 教授 (50340469)
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研究分担者 |
佐藤 純 京都ノートルダム女子大学, 生活福祉文化学部, 准教授 (90445966)
倉知 延章 九州産業大学, 国際文化学部, 教授 (10364697)
長崎 和則 川崎医療福祉大学, 医療福祉学部, 教授 (90309641)
岡田 まり 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (40309076)
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キーワード | 包括型地域生活支援プログラム(ACT) / 疾病管理とリカバリー / 家族支援 / 援助付き雇用(SE) / フィデリティ評価 / ACTスタッフに対する研修 |
研究概要 |
1 ACTにおける疾病管理とリカバリー(IMR)に関する研究:ACTや就労移行支援事業を利用している利用者を対象に当事者スタッフを中心としたIMRを実施し、リカバリー尺度やエンパワメントスケール等を用い効果測定を行うとともに、参加者に中間期と終了時にインタビュー調査を行い、効果を測定した。疾病への理解だけでなく、自信の回復、就労意欲の高まり、インナースティグマの改善が認められた。 2 ACTにおける家族支援の研究:英国における家族支援技法「Family Work」の導入プログラムの精緻化を図るため、英国Birminghamにおける家族支援技法のトレーニングプログラムと支援技法の実際について現地調査を行った。さらにわが国における「Family Work」導入の課題を検討した。 3 ACTにおける援助付き雇用(SE)に関する研究:自立支援法の就労移行支援事業を活用することで財源が確保でき、効果的な援助ができることがわかった。相談、職場開拓、職場での個別移行支援、就職後のフォローアップなどの個別就労支援が重要で、粘り強く行うことで達成できることがわかった。しかし、ACTチームとの統合的支援に課題を残した。また、集団プログラムの必要性もでてきた。 4 ACTにおけるフィデリティ評価に関する研究:ACT実践者に,フィデリティに関する項目及び内容に関してインタビュー調査を行った。調査は7つのチームに対して行い,延べ22名にインタビューを実施した。内容は逐語録にして、質的研究方法によって分析を行い始めたところである。 5 ACTスタッフに対する研修のあり方に関する研究:チームリーダーら5名を対象にインタビュー調査を実施した。スタッフに必要な力量として生活モデルの視点、リカバリー志向、柔軟性、関係づくり等の技能などがあり、それらの獲得は臨床経験、リーダーやエキスパートの同行訪問、個別およびグループスーパービジョンなどによって促進され、職場環境やチームのあり方が大きく影響していることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
疾病管理とリカバリーに関しては、平成23年2月からACTチームで実施し、ACT利用者のために平成23年4月から開設された自立支援法に基づく就労移行支援事業で、現在第2、第3グループを実施中である。その結果、就労に移行する利用者が出てきた。家族支援は、英国での視察を終え、わが国における「Family Work」導入の課題を明らかにした。援助付き雇用に関しては、ACTと就労移行支援へのつなぎに課題がある。フィデリティ評価は、ACT実践者や評価者等にインタビューを行い、尺度の開発が進んでいる。ACTスタッフに対する研修のあり方に関しては、ACTスタッフに必要な技能と、技能の獲得方法が明らかになりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
疾病管理とリカバリーに関しては、順次新規グループで実施し、効果測定を行うとともに、ニューヨーク州で行われているWellness Self Managementの要素を取り入れ、日本にふさわしいテキストに改善しつつ、効果測定を継続する。家族支援に関しては、「Family Work」をACTに導入していく。ただし、「Family Work」のスーパーバイザーが日本にはいないため、英国から招聘することが必要であり、招聘経費の捻出が課題であり、KAKEN以外の助成金等の獲得も検討したい。援助付き雇用に関しては、ACTプログラムにグループ活動を導入し、就労移行支援事業の活用が円滑に行えるよう試み、就労率を上げる方策を検討する。フィデリティ評価は、フィデリティ調査項目を決めるプロセスやアメリカにおけるフィデリティの内容に関する情報を得るために,8月頃にニューヨークにあるACTチームへのインタビューを行う予定である。ACTスタッフに対する研修のあり方に関しては、調査対象者を増やすとともに、スーパービジョンを導入し、その効果を明らかにする。
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