研究課題/領域番号 |
22330180
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大渕 憲一 東北大学, 大学院・文学研究科, 教授 (70116151)
|
研究分担者 |
佐藤 弘夫 東北大学, 大学院・文学研究科, 教授 (30125570)
三浦 秀一 東北大学, 大学院・文学研究科, 教授 (80190586)
|
キーワード | 価値観 / 仏教 / 儒教 / 神道 / 東アジア / 集団主義 |
研究概要 |
本年度は日本人向けに作成した伝統的価値観尺度を近隣の東アジア諸国で実施した。この尺度は仏教、儒教、神道・国学の3分野に渡る下位尺度から成るが、神道・国学は日本独自のものなので、これは除外した。また、また仏教分野のふたつの下位尺度「厭世主義」と「空と超俗」も日本で独自に発展した価値観なのでこれらも除外した。さらに、昨年の日本人を対象とした分析において「禁欲と慈悲」下位尺度の中の1項目が信頼性を低下させていたので、これも除外して合計46項目によって伝統的価値観を測定した。 中国と台湾においてそれぞれある国立大学の学生(583名、452名)、韓国ではある私立大学の学生(385名)を対象に、伝統的価値観尺度、Triandis & Gelfand (1998)の個人主義・集団主義尺度を含む調査票を実施した。どの国における調査でも回答は無記名である。伝統的価値観を3国で比較したところ、儒教の中の「忠孝と義務」「恥と世間」「賢君思想」の下位尺度得点はいずれも中国が最も高く、次いで韓国で、台湾は最も低かった。仏教分野の「禁欲と慈悲」も中国が最も高く、次いで台湾、韓国の順だった。 一方、儒教の「天意・天命」と仏教の「輪廻と法力」は台湾が他の2か国よりも高かった。このように、いずれの国も歴史的には仏教と儒教の影響を受けてきたが、現代人の価値観には下位尺度に示された価値の内容に関してはずれがあった。Triands & Gelfandの尺度の国別平均値を見ると、垂直的次元でも水平的次元いずれもマイナスで、このことはこれら東アジア3か国において集団主義が優勢であることを示している。3か国の比較では、垂直的次元では台湾の集団主義が最も強く、水平的次元では中国が最も集団主義が強かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は伝統価値観及びこれらと関連すると思われる他の価値、それに社会属性など測定する調査を中国、韓国、台湾で実施して、東アジア諸国の間でこれらの比較を行う予定だった。平成23年3月の東日本大震災のため未了だった平成22年度の研究計画をまず実施したので、本年度の計画の遂行は5か月遅れで開始されることとなったが、これらアジア諸国での調査が順調に進み、最終的にはおおむね計画通りに実施することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
申請書に記載の計画を予定通り遂行する。計画の(1)は現代日本人における伝統的価値観の影響を検討することで、家庭、学校、職場、地域その他の社会生活の諸側面について調査を行い、伝統的価値観の影響を分析する。計画の(2)は同様の調査を、規模を縮小して中国と韓国で実施する予定である。
|