研究課題/領域番号 |
22330181
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
唐沢 かおり 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (50249348)
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研究分担者 |
竹村 和久 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (10212028)
戸田山 和久 名古屋大学, 情報科学研究科, 教授 (90217513)
藤井 聡 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80252469)
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キーワード | 責任 / 謝罪 / 印象操作 / 組織コミュニケーション |
研究概要 |
1)組織や集団のの責任判断の実証的検討 組織の責任判断については、組織不祥事と個人の苦境に関する責任判断を対象に、公正回復動機、報復動機などの動機的要因、また公正世界観などの態度の個人差要因が、判断に与える影響を検討するための実験や調査を実施した。集団の責任判断については、個人の責任と公的な責任に対する判断規定要因の差異を明らかにするために、「介護」場面を対象とした調査研究を実施した。その結果、組織不祥事については、企業の公共性などの要因が、動機や個人差要因の影響を調整する可能性を示す結果を得ており、企業特性に着目した研究が今後必要であることが示唆された。個人責任と公的責任の規定要因に関しては、両者の背反的な関係や、イデオロギー変数(保守・革新)の役割に関しての知見を得た。加えて、組織と個人との関係が責任判断に及ぼす影響を考察するために、自己と所属集団の関係や、自己評価維持メカニズムに関する研究も行い、基礎的な社会的認知過程に関する知見を得た。 2)コミュニケーションの印象操作効果の検討 不祥事事態における組織コミュニケーションがもたらす印象操作効果を検討するために、不祥事に対して、会社から提出された説明や謝罪文、また経営陣の口頭での謝罪会見が、企業責任の認知や非難にどのような影響を与えるかを検討した。その結果、謝罪は責任判断を高めるネガティブな効果が、昨年度の研究に引き続き確認されたものの、許し感情に及ぼす効果については、一貫した知見が得られなかった。この結果については、謝罪として提示する文言の言語表現が、謝罪の意図や謝罪の誠実さ認知に影響し、謝罪そのものが持つ効果を不安定にしてしまう可能性があると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験的検討を精力的に行いデータ収集を重ねてきたが、必ずしもすべての知見において、一貫性を見出すことができず、その理由の同定に関する議論に、多くの時間を取った。また、従属変数が多数に及ぶ実験であったので、結果の中には、予測に反するものも存在し、刺激統制のレベルからの考察を必要とした。一方で、その作業を通して、新たな調整変数の役割について検討することにつながり、責任判断の総合的なモデルとしての知見の拡大に、貢献したと考える。
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今後の研究の推進方策 |
実験的検討は、基礎的な変数間の関係を把握するうえで不可欠であり、今後もそれを精力的に続ける所存である。また、多様な手法を用いての検討が必要であることもその通りであり、一般成人を対象とした質問紙調査や、インターネット調査などの手法を用いて、多様な層からのデータを収集し、より一般性のあるモデル構築を目指すことが必要であると考えている。
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