研究概要 |
平成22年度は初年度なので,幼児期から成人期までの各年齢段階における関係性攻撃の測定尺度の作成を行った。まず,PsychInfoやCiniiなどのデータベースを用いて内外の関連文献を網羅的に検索し,幼児期,児童期,青年期(中学と高校),大学生,社会人(職場)の5つの年齢段階における既存の関係性攻撃尺度を収集した.これに加え,児童期,青年期,成人期のいじめ被害経験をまとめた手記に記載されていた関係性攻撃あるいはそれに類似した攻撃行動を抜粋した.次に全ての年齢段階にわたって収集された全ての尺度項目と手記から得られた行動記述を並べ,関係性攻撃の様態の観点からKJ法により整理分類した.その結果,全尺度項目は,「噂の流布」,「悪口」,「操作」,「同調」,「社会的排除」,「排他的な友人関係」,「無視」,「その他」の8カテゴリーに大別され,さらにこれらの下に合計23の下位カテゴリーに分類された(4月~9月).こうして幼児期から成人期に至る発達過程で現れる関係性攻撃の網羅的な分類枠組みが完成した.この分類枠組みに基づき,幼児用(教師評定),児童用,中高生用,大学生用,成人職場用の5つの年齢段階ごとに新たに項目プールを作成し,各年齢段階の関係性攻撃測定尺度の原版を作成した(10月~1月).大学生用関係性攻撃尺度原版(76項目)については,東北,関東,関西の5大学約350名のデータを収集し,項目分析,因子構造,尺度の信頼性の検討を行った。成人職場用関係性攻撃尺度原版(63項目)については,多様な業種と年齢層にわたる200名の調査対象者からデータを得,項目分析,因子構造,尺度の信頼性並びに併存的の検討を行った.小学生用関係性攻撃尺度原版(71項目)と中高生用関係性攻撃尺度(73項目)については,それぞれ小学校教員100名,中高生教員100名を対象に調査を行い,項目の妥当性の検討をおこなった.これらの研究成果は,H23年度に開催される内外の心理学会で公表する予定である.
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