研究概要 |
今年度は【1】震災の影響で完成できなかった各年齢段階ごとの関係性攻撃の個人差測定尺度の作成,信頼性・妥当性の研究を行うこと,【2】作成された尺度を用いて,申請当初の研究計画の[研究3]に該当する適応との関連の検討を小,中,大,職場の成人を対象に検討することを目的とした. 【1】(1)児童用多次元性関係性攻撃尺度(教師評定)の作成:全国の小学校教師101名に最終的に2因子(孤立化,追従的RA)9項目からなる多次元性関係性攻撃尺度(教師評定)を作製(α=.93,.91).PSBSTとの併存的妥当性実証.(2)中高生用多次元性関係性攻撃尺度(教師評定)作成:中学校・高等学校教員316名(男110,女183名,不明2)に小学校と同様の方法で実施.最終的に2因子(孤立化,噂流布)9項目からなる多次元性関係性攻撃尺度(教師評定)を作成(α=.89,.90).PSBSTとの併存的妥当性実証.(3)大学生用多次元性関係性攻撃尺度の作成:4校の大学生309名(男170,女138)対象に,4因子(関係拒否,操作,対恋人関係性攻撃,陰口)33項目からなる多次元性関係性攻撃尺度(大学生用)が作成された(α=.87,.81,.87,.81).BAQなどとの併存的妥当性実証済.(4)職場成人用多次元性関係性攻撃尺度の作成:全国の10代~60代の勤労者719名(男357,女362)を対象に,因子分析の結果,4因子(孤立化,関係操作,陰口・噂,無視)34項目の多次元性関係性攻撃尺度(職場成人用)が作成された(α.89,.88,.85,.80),BAQなどとの併存的妥当性実証済.【2】(1)小中学生の関係性攻撃と適応との関連の検討:全国の小学校教師84名,中学校教師85名を対象に,受け持ちの学級の人気児と拒否児を1名ずつ選び.多次元性関係性攻撃尺度,PSBS-T,CBCL-TRF抑うつ不安尺度,非行尺度で評定させ,重回帰分析を実施,身体的攻撃を統制してなお,関係性攻撃に抑うつ不安と非行的行動に対して独自の寄与が見られた.(2)大学生の関係性攻撃とストレス反応との関連の検討:大学生320名に多次元性関係性攻撃尺度(大学生用)とストレス反応尺度等を実施.重回帰分析の結果,他の攻撃の影響を統制してなお,関係拒否が不安・不確実感,抑うつ気分と正の関連があることなどが明らかにされた.(3)職場成人の関係性攻撃とパーソナリティ障害傾向との関連の検討:全国の勤労者220名を対象に,多次元性関係性攻撃と人格障害傾向との関連を検討,サイコパシー傾向が関係性攻撃の様々な次元と有意な関連があることが明らかになった.開発された尺度により全年齢段階で関係性攻撃を多次元的に測定することが可能になったこと,全年齢層で関係性攻撃が不適応と密接な関連を持つことを示した点は重要な成果と言える
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,申請当初に予定していた「研究2」に対応する部分(小中学生の関係性攻撃と,関連要因の検討)と,来年度実施する関係性攻撃抑止プログラムの作成を行う.「研究2」では,文化的自己観,社会的情報処理,攻撃行動観,情動制御など,関係性講義の瀬戸維持とにかかわる要因の検討を行う.対象は小学高学年か中学生を予定している,また,関係性攻撃抑制プログラムの作成に際しては,近年米国で公表されているプログラムをよく踏まえながら,日本の子どもの日常的現実に即したものを作成する.研究体制は基本的に過去2年間行ってきた体制を継続するが,プログラム作成のために必要な人材を研究分担者に追加する可能性がある.なお,成果発表は引き続き国内外の学会と代表者の研究室のホームページ上で行うが,紀要や学術誌への投稿も促進する.
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