研究課題
本研究では、就学前期を通じた子どもの社会性(他者への信頼、共感・協調性、コンピテンス、問題行動)の発達を促進もしくは阻害する要因の探索と長期的な影響プロセスについて検討を行った。子どもを取り巻く家庭-園・学校-地域の相互関係的環境と子どもの個人的特性(気質やパーソナリティ)の両者を影響要因とし、子どもの社会性が家庭や学校の育成機能の低下に伴い損なわれる場合にセーフティネットとなる要因の探索を行った。本年度は、調査に継続して参加している年少から年長の子どもがいる約280家庭(単胎児210、双生児70)、および年長児のいる約40家庭には所属する園の担当教諭に質問紙調査を実施した。また、年中児がいる約40家庭には実験調査により社会性を行動レベルで評価して関連要因との検討を行った。その結果、5歳時点においても、他者との親密な関係を重視するパーソナリティ特性が仲間との信頼を損ねる行動を抑制する可能性が示された。主な実績として、昨年度に小学校低学年の担任に実施した調査をまとめ、教師の赴任地域が出身地かどうかに関わらず、教師の地域への関心度や親や地域住民に抱く信頼の高さが、子どもが仲間と関わる機会を提供する地域での連携活動への積極性に関わるという結果を教育心理学会で報告した。また、年中児のいる家庭のデータを用いて、家庭の地域活動への積極性(お祭りやバザーなどの行事への参加、近所との交流など)に関わる要因を検討したところ、母親の地域への関心度が有意に関わり、母親がその地域の出身地かどうかや居住している年数、居住地域の物理的環境(教育施設の数や治安の良さなど)、父親の地域への関心度といった変数との関連は見られなかった。これらの結果から、家庭―学校―地域が有機的に連携し子ども同士が関わる機会を増やすには、エージェントとなる母親や教師の居住地域への関心を高めることが優先されることが示された。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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パーソナリティ研究
巻: 24 ページ: 印刷中
佐賀大学教育実践研究
巻: 31 ページ: 41-50