研究課題/領域番号 |
22330193
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
小玉 正博 筑波大学, 人間系, 教授 (00114075)
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研究分担者 |
川崎 直樹 北翔大学, 人間福祉学部, 准教授 (90453290)
石村 郁夫 東京成徳大学, 応用心理学部, 助教 (60551679)
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キーワード | ポジティブ心理学 / 健康生成 / 肯定的心理資源 / 心理教育的介入 / 人間力育成 |
研究概要 |
今年度は,(1)前年度に開発・実施した文化的文脈を考慮した肯定的心理資源の育成プログラムの効果についての二次的分析,(2)同プログラムの多施設比較トライアル(multicenter trial)及び簡便版の開発を目的に研究を実施した。 (1)二次的分析において,実験協力者のホームワーク上の言語報告などを分析した結果,各ワークの効果に重要な要因(例:自己への思いやりワークにおける感謝の重要性,感謝のワークにおけるメールや手紙等の伝達方法の有効性など)が明らかにされ,ワーク実施の留意点が示唆された。 (2)他施設比較及び簡易版の開発のため,最初に開発された5ワークから、3ワーク(セルフトーク、強みの種発見ワーク、リフレーミングワーク)を選択し、週1回(90分)で実施した。プログラム参加者は、Aグループ35名(女性:平均年齢22.4歳)、Bグループ29名(男子22名、女子7名:平均年齢19.9歳)であった。ワークの効果は,実施前・後、および1ヶ月後に測定された心理的変数(自己本来感、自尊心、心理的ウェルビーイング,抑うつ,ホープ)で検証された。結果として,プログラム実施の全体傾向として、ワーク実施に対する気分感情はポジティブ感情が上昇し、ネガティブ感情が下降することが示された。ただし、その効果はAグループにおいてより顕著であった。さらに、心理変数ではAグループは自己本来感、自尊心の他、心理的ウェルビーイングとホープの下位側面に有意な介入効果を示した。Bグループでは有意な変化は示されなかった。多施設比較の結果、肯定的心理資源の育成プログラムの効果が部分的段階に留まった。その原因については今後さらにプログラム導入手続きを精査するほか,サンプル数と実施施設を増やして、吟味することが次なる課題となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主たる目的であったプログラムの開発は,初年度に複数の試行トライアルの実施と,それを踏まえた本トライアル実施が達成された。効果量などを鑑みても大きな効果があることが実証された。現在,その簡易版作成と多施設比較によって,効果検証と適用範囲の同定が勧められている。また,二次分析等の結果から,副次的に肯定的心理資源の育成に関する基礎的知見も集積されており,新しい理論的追補も得られている.
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策については,以下の2点が主眼となる。まず一点目として,引き続き,簡易版による他施設比較を実施することである。前年度研究計画では,施設による効果の違いが表れた。これについて,実施者要因・対象者要因・文脈的要因(主旨の説明や目的の設定など)などについて,質的・量的観点から重要な要素を明らかにしていくことが課題である。2点目としては,小集団ないし個別事例における準臨床的な適用とその効果と過程について量的・質的な検証を行うことである。本プログラムは現在,研究協力者に対する実施や,大学の講義の一環としての実施などの文脈でのみ実施されている。より,臨床的場面に近い,相談・支援場面における適応とその限界について,対象者への十分な倫理的配慮の上で検討していきたい。
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