研究課題
犯罪や自殺、災害など突然の死別による遺族に多くみられる複雑性悲嘆の治療プログラムの開発および海外ですでにエビデンスのある治療法の有効性の検証を行うことを目的として、平成22年度では以下の2つの研究を実施した。(1)複雑性悲嘆の認知行動療法(Shear et al., 2005)の適応性および有効性の検証重要な他者との死別を経験した成人で複雑性悲嘆を主訴とするものを対象に、対照群をおかない単群での治療効果研究を3施設(国立精神・神経医療研究センター病院、武蔵野大学心理臨床センター国際医療福祉大学大学院青山心理相談室)で実施した。Shearらの治療マニュアルを用いて、週1回、1回90分~120分のセッションを16回し、複雑性悲嘆の重症度と診断の喪失、反応者の割合を治療前、治療後、1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後、1年後に効果の評価を行った。平成22年度終了時までに5例のエントリーがあり2例が治療終了し、他は継続中である。治療を終了した2例については、治療前と比較し、治療後、1年後において複雑性悲嘆症状の軽減が見られている。(2)インターネットを用いた認知行動療法(Wagner et al., 2006)医療受診の困難な遺族や遠隔地在住の遺族には、対面式の治療だけでなく、より多くの遺族が利用できるその他の治療の必要性である。そのため、ドイツの研究者Wagnerによってインターネットを媒介とした認知行動療法を用いた筆記課題を行う複雑性悲嘆治療プログラムを開発した。本年は国内での予備的実施として、一般成人遺族を対象にWagnerらの筆記プログラムの一部を3日間、3課題の筆記と筆記前後の複雑性悲嘆、PTSD症状の評価紙面ベースにて実施した(有効回答数28名)。筆記前後において複雑性悲嘆での有意な減少が見られた。今後は、対象数を増やし電子ベースでの実施に伴う課題について検討する予定である。
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