研究課題/領域番号 |
22330197
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研究機関 | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
中島 聡美 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所・成人精神保健研究部, 室長 (20285753)
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研究分担者 |
金 吉晴 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所・成人精神保健研究部, 部長 (60225117)
小西 聖子 武蔵野大学, 人間関係学部, 教授 (30251557)
白井 明美 国際医療福祉大学, 大学院・医療福祉学研究科, 講師
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キーワード | 複雑性悲嘆 / 認知行動療法 / 筆記療法 / インターネット / 遺族ケア |
研究概要 |
犯罪や自殺、災害など突然の死別による遺族に多くみられる複雑性悲嘆の治療プログラムの開発および海外ですでにエビデンスのある治療法の有効性の検証を行うことを目的として、平成23年度では以下の2つの研究を実施した。 1.複雑性悲嘆の認知行動療法(Shear et al.,2005)の適応性および有効性の検証 重要な他者との死別を経験した成人で複雑性悲嘆を主訴とするものを対象に、対照群をおかない単群での治療効果研究を3施設(国立精神・神経医療研究センター病院、武蔵野大学心理臨床センター国際医療福祉大学大学院青山心理相談室)で実施した。Shearらの治療マニュアルを用いて、週1回、1回90分~120分のセッションを16回し、複雑性悲嘆の重症度と診断の喪失、反応者の割合を治療前、治療後、1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後、1年後に効果の評価を行った。平成23年度終了時までに5例が治療終了し、1例が治療後評価中である。治療を終了した5例は、治療前と比較し複雑性悲嘆症状の軽減が見られた。また、現在のところ深刻な有害事象は見られていない。 2.インターネットを用いた複雑性悲嘆の認知行動療法(Wagner et al.,2006) 医療受診の困難な遺族や遠隔地在住の遺族には、対面式の治療だけでなく、より多くの遺族が利用できるその他の治療の必要性である。そのため、ドイツの研究者Wagnerによってインターネットを媒介とした認知行動療法を用いた筆記課題を行う複雑性悲嘆治療プログラムを開発した。このプログラムを一般成人遺族28名を対象に紙面ベースにて実施したところ、筆記前後において複雑性悲嘆での有意な減少が見られた。また、被験者の募集のため、インターネットでの筆記療法についてのサイトを作成し、公開した。今年度は、軽度の複雑性悲嘆患者を対象に、プログラムの効果の評価を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
対面による複雑性悲嘆の認知行動療法については、研究参加者に対しては良好な結果が得られているが、被験者のリクルートが困難であることと、また参加希望者で適格者が少ないため、研究の遅れがある。現在当初予定の15例に対し、治療終了者5例である。インターネットを用いた複雑性悲嘆の認知行動療法では、プログラムの開発と一般健常者を対象とした予備研究が終了しており、予定通りの進行である。
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今後の研究の推進方策 |
1.複雑性悲嘆の認知行動療法(Shear et al.,2005)の適応性および有効性の検証 今年度は、予定症例数である15例の登録を目標としている。そのため、被験者募集のためのホームページの充実を図るなどのリクルートのための工夫を行う。治療前後における効果評価および安全性を含む有効性の評価を行い、その結果を学会等で公表する。 2.インターネットを用いた複雑性悲嘆の認知行動療法(Wagner et al.,2006) 今年度は、軽度の複雑性悲嘆の患者を対象に、プログラムの効果の実証を行う予定である(目標症例数10)。治療前後における効果評価および安全性の評価を行い、その結果を学会等で公表する。
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