研究課題/領域番号 |
22330199
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
横澤 一彦 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (20311649)
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キーワード | 共感覚 / 情報統合 / 認知心理学 / 統合的認知 / 高次視覚 |
研究概要 |
日本語話者の色字共感覚者が,音韻や数値を共有する仮名や数字(例:“あ”と“ア”,“1”と“一”)に対して,類似した共感覚色を知覚する傾向を明らかにし、Conscious & Cognition誌に学術論文として掲載された。 さらに、非共感覚者における色字連合を調査し,対応の規則性を検討した。共感覚傾向の強弱が連続的に分布するとの想定から,対応の時間的安定性に基づいて参加者を2群に分け,対応づけの規則に差が見られるかを検討した。日本語を母語とする女子大学生188名のデータを分析に使用した。選択色の時間的一貫性と字種間一貫性 40種類の数字・文字に対する2回のテストにおける選択色の時間的一貫性は広範囲に及び,連続的な単峰型分布を示した。非共感覚者においても出現頻度の高い文字を言語学的に基本的で弁別性の高い色に結び付ける傾向が存在することが初めて確認した。そして,この傾向は共感覚傾向の低い群で強く現れ,高い群では縮減ないし消失した。共感覚傾向が高い人々では,文字と色の序列に基づいた単純で粗い対応づけの規則への依存度が相対的に低くなる一方で,より精緻で個人特異的な対応づけを行う傾向が強まると考えられる。この成果は、Psychonomic Societyで発表すると共に、日本心理学会のワークショップで取り上げ,議論を深めることができた。さらに、共感覚的傾向に個人差があることを明らかにするため、7千人近くのアンケート調査を実施したので,詳細な分析に今後取り組む。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り、共感覚者の実験データが蓄積される一方で、共感覚を持たない一般人の共感覚的傾向に個人差が大きいことが明らかにできたことが大きな研究成果と考えている。共感覚という自覚を持たないけれども、文字と色の関係を共感覚者と変わらないようなレベルで安定的に回答する方々がいるということは、共感覚的認知の延長上に、共感覚がある可能性が高まったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,共感覚者の実験データが蓄積する一方で、共感覚的認知の延長上に、共感覚があることを証明するために、一般人に共感覚者と同様の実験に取り組んでもらう計画である。但し,一般人が共感覚者のように色を感じることができる訳ではないので,慎重に実験計画を考案する必要がある。
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