研究課題/領域番号 |
22330200
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
川合 伸幸 名古屋大学, 情報科学研究科, 准教授 (30335062)
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研究分担者 |
香田 啓貴 京都大学, 霊長類研究所, 助教 (70418763)
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キーワード | 表情伝染 / 霊長類 / 情動 / 模倣 / サル / 進化 / 共感 / 同調行動 |
研究概要 |
他者のある表情を観察すると、つい同じような表情をすること(表情伝染)が知られている。本研究では、ヒトの表情伝染の進化的・生理学的基盤を調べる。チンパンジーの「あくび伝染」の報告はあるが、サルではまだ観察されていない。ヒトと同じように、行動として観察されなくても筋電のレベルで表情が伝染している可能性がある。そこで、サルをモンキーチェアに固定し、表情伝染が生じるかを検討する。もし、サルで表情伝染が観察されれば、萌芽的な模倣能力をサルが有していることを示唆する。さらに、ヒトで「伝染時」の脳内過程を調べる。 1)ヒトの実験: 「あくびにつられる」という現象がある。自閉症者のあくび伝染は少なく、外集団より内集団のメンバーのほうがあくびは多くうつるとの報告から、あくびは単なる行動伝染ではなく、共感を媒介したものであると考えられている。近年の脳機能画像研究は、あくびの際に活性化する脳領域を同定しつつあるが、時間的・機能的な処理過程は不明である。そこで、あくびと単に口をあけている動画に対する事象関連電位(ERP)を記録し、差が見られた時間で電源推定を行った。動画停止開始から1000 msをすぎたあたりにあくび条件で大きなERPが得られた。これは右背外側前頭野(BA 9)を基底とする電位であった。ここはいわゆる抑制に関連する領域であり、あくびを抑制しようとしていることを反映していると考えられる。また、口が最大に開く3000 ms付近のあくび条件の大きなERPは、「心の理論」やメンタライジングに関連する前頭腹側(BA 47,11)に基底をもつ電位であったことから、あくびの伝染が高次な社会的認知と関連することが示唆される。 2)サルの実験: サルをモンキーチェアに座らせる訓練を行い、これがすんで個体から、顔面に筋電用の電極をはりつけ動画を見るという馴致を行った。刺激で用いるサルの表情を撮影・編集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒトの表情伝染の一貫として、あくびの伝染の研究を行ったが、脳波の解析に時間がかかり、現在分析を進めているところである。また、サルの実験は馴致がすすみ、モンキーチェアーで電極に慣れるところまで訓練が進んだが、測定には至っていない。そのため、研究期間を一年延長した。
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今後の研究の推進方策 |
サルが表情を表出している動画をさらに用意するため、H24年度までのように研究所の飼育ケージにいるサルではなく、動物園のサルの表情も撮影し、刺激として利用する準備と進めている。またサルの筋電の測定が困難な場合は、筑波大学の鈴木健嗣先生に協力を依頼し、シリコン電極での計測も検討する。
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