研究課題
ヒトの視知覚特性の解明において、刺激画像の統計的特徴との関係を解析する手法の有効性が示されてきた。本研究は、従来静的な画像を主な対象として行われてきた解析を、刺激画像が動く動的な状況に拡張し、さらに網膜や視覚野レベルの神経活動によって表象される画像情報の統計的特徴に着目して、画像情報の特徴と視知覚特性との関係を説明する計算論的モデルを構築することを目的とした。平成22年度は、まず本補助金により導入した視覚画像作成装置(ViSaGe)とPCを中心とした画像作成・解析・心理学実験システムを構築した。次に画像刺激の統計的特徴解析を行うため、インターネットから解像度の高い芸術画像と自然画像を各100枚収集し、8bitグレースケール画像に変換した上で、その基本的画像統計量(輝度分布の平均、分散、歪度、尖度)と2次元空間周波数特性を求めた。さらに、グレースケール原画像にDOGフィルターをかけた後の基本的画像統計量と周波数特性を求め、原画像の結果と比較した。これらの結果は、本研究とは異なる画像を用いて同様の解析を行ったGraham & Field (2008)とよく一致しており、本研究での解析手法の妥当性を確認するものであった。さらに、Tonder et.al.(2007)が構築した、動画像に対する網膜錐体反応モデルを各画像に適用し、動きの要因が、統計的画像情報特徴にどのような効果をもたらすかを検討した。その結果、モデル出力の空間周波数特性は、高周波領域でのパワーが低下すること、及び動画像に対する応答は、静止画像にガウスフィルターをかけたものとよく一致することが示された。このことは、フィードバック制御を組み込んだ網膜錐体反応モデルの挙動が、極めて単純な画像フィルタリングでほぼ再現できることを示しており、次年度以降の動画像解析にとって効率的で有効な手法を提供するものであると言える。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)
色材協会誌
巻: 84(3) ページ: 81-86
AIC 2010 Color and Food, Interim Meeting of the International Color Association-Proceedings
ページ: 405-408