研究概要 |
本年度の研究実施計画は,時空間特性における心理物理学的知見と電気生理学的知見の齟齬について心理物理学実験,及び,脳機能画像解析により色チャンネルと輝度チャンネルの時空間周波数特性を計測し,各チャンネルのインパス応答関数をそれぞれ比較することであった. まず心理物理学実験であるが,Gabor関数を視覚刺激として提示し,空間感度特性を大きさ知覚について調べた.これは,最終年度で取り扱う問題である形状知覚機序を解明するための基礎的な視覚特性である.実験の結果,大きさ知覚は刺激のコントラストに対して線形に変化するが,基準刺激に対して大きいと知覚する場合と小さいと知覚する場合では,その検出感度が異なることから,知覚される大きさの持つ曖昧性に非対称性があることが明らかとなった. これは,従来の視覚系の空間感度特性をコントラスト検出閾値からMTFを求めるというアプローチにおいて,その感度特性が持つ統計的信頼性以外についても考慮する必要があることを示唆している. 脳機能画像解析では,従来の空間感度特性を求める手法において用いられる視覚刺激を提示した時のfMRIを測定した.この実験は現在も継続中であり,最終結果には至っていないが,第一義的には視覚1次野において刺激の空間特性に応じた皮質活動が得られている.ただし,詳細については次年度,全ての実験結果をもって報告する.当初,この実験は次年度行い,本年度はMEGを用いた時間的特性を調べる予定であったが,実験装置の都合上,平成23年度の空間感度特性を先行して実験を行い,次年度MEGを用いた時間的特性を調べることとなった.
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