研究概要 |
人の初期視覚情報処理過程は生理的,機能的,また解剖学的にも異なる大細胞系経路と小細胞系経路に大別される.前者は輝度情報を,後者は色情報をそれぞれ後段の皮質過程へと伝達していることが多数の先行知見により報告されている.しかし,これらの知見では心理物理学的結果と電気生理学的結果に矛盾する部分があり,未だその齟齬は解決されていない.そこで,本研究課題では,本年度,(1)色情報と輝度情報の時空間特性に関する心理物理学的結果と電気生理学的結果の矛盾について,精緻な心理物理学実験,及び,脳機能画像解析を行い,これらの問題の解明に取り組んだ. 本年度は,予算額の制約と研究分担者の途中退任によって昨年度完了していなかったMEGによる脳機能画像解析による時間的インパルス応答の測定と解析の一部を,研究分担者小島とともに継続実施した.ただし,時間的インパルス応答を求めるための解析は現在も進行中である. 並行して色チャンネルと輝度チャンネルの時空間周波数特性について研究分担者内川と心理物理学実験を行い,実験結果から各チャンネルのインパス応答関数を求めた.なお,現在も一部解析中である. また,同特性について脳機能画像解析によるアプローチでは研究分担者の小島,川端とfMRIを用いて調べた.実験の結果,被験者間によって多少の差はあるが,一部の特性は,心理物理学実験から得られる周波数特性と同様な特性が得られた.しかし,現在も解析中であり,その全容については,実験結果から得られる各チャンネルのインパス応答関数をもとに詳細に検討する必要があり,それについては現在解析中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題申請時に予定していた予算が認められなかったため,初年度の実験計画を変更したことにより一部の実験(MEGを他機関において無償で借りて実験を行ったため,利用時間の制約があった)が遅れていた.そのため,本年度その一部を実行したが,その解析が一部残った.この作業は最終年度の次年度内に早急に行う予定である.
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今後の研究の推進方策 |
当初予定にある運動,奥行,形状知覚の各モダリティについてそれぞれ色情報の役割とその機序を本年度までの基礎的な心理物理学実験,脳機能画像解析実験をもとに発展させることが次年度の主な実験計画である.これまでに,そのうちMEGを用いた脳機能画像解析実験については解析が終了していないため,それを行い,3つの上記モダリティに関する機序のうちできる限り多くについて解明できるように実験を行う.
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