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2011 年度 実績報告書

内発的、学習獲得的、生理的な報酬の機能と作用機序に関する生理心理学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 22330205
研究機関財団法人東京都医学総合研究所

研究代表者

渡辺 正孝  財団法人東京都医学総合研究所, 認知症・高次脳機能研究分野, 特任研究員 (50092383)

研究分担者 児玉 亨  財団法人東京都医学総合研究所, 認知症・高次脳機能研究分野, 副参事研究員 (20195746)
キーワード生理的報酬 / 学習獲得的報酬 / 内発的報酬 / 線条体 / 前頭連合野 / ニューロン活動 / 神経伝達物質
研究概要

学習を強化する報酬には、生理的、学習獲得的、内発的なものがある。本研究は、報酬に関係した活動がよく見られる線条体と前頭連合野に焦点をあて、これらの脳部位は3種類の報酬にどのように応じるのかをサルとヒトにおいて詳しく調べ、これらの異なった種類の報酬の機能的相違を脳メカニズムのレベルで解明しようとするものである。
(1)本研究が採択された後の1-2年の間に内発的報酬の脳メカニズムに関するfMRI研究が多数現れたことから、fMRI研究については当初の予定を変更して、まずそうして発表された研究を詳しく分析し、より本質にせまる研究をすべくこの分野の文献的研究を行った。
(2)内発的動機づけのメカニズムをニューロンレベルで調べる研究も現れたことから、当初の計画を変更し、内発的動機づけを直接にではなく、餌や水のような外発的報酬の価値が内発的動機づけにより変容する側面に着目した実験を考案した。サルに競争的ゲームを行わせ、競争という生理的あるいは学習獲得的ではない操作が報酬の価値を高める現象について、行動レベル(反応時間など)とニューロンレベルで検討する実験を行った。
(3)報酬行動に対する薬物の影響を調べるため、ADHDの治療薬にも用いられるメチルフェニデートが報酬応答と、その報酬を得ようとする行動に関係して、脳内神経伝達物質にどのような変化をもたらすのかをマイクロダイアリシス実験によって調べた。その結果、この薬物は前頭連合野のドーパミンを増加すること、適量の投与は報酬獲得行動を促進することが明らかになった。
(4)異なった価値をもつ報酬が、生理的か学習獲得的かにより脳内で異なった内容の報酬応答を促す可能性に関し、報酬の有無、報酬が学習行動によるのか、受動的に与えられるものなのか、という違いに着目して神経伝達物質の変化を調べるマイクロダイアリシス研究を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

3つの異なった種類の報酬のうち、とりわけ内発的報酬の脳メカニズムを詳しく調べ、他の報酬の脳メカニズムと比較することを目指したが、この研究が採択された直後からこのトピックに関する人のfMRI研究が数多く現れ、かつサルにおけるニューロン活動の研究も出始めたことから、当初の計画通りの実験では独創性を生かせないと考え、他の研究者とは異なる方法を用いた研究計画に基づく実験を始めたことで計画にはやや遅れが出ている。

今後の研究の推進方策

人のfMRI研究で得られた成果をもとに、3つの報酬の脳メカニズムを比較する研究を文献的にも進めることとする。また、報酬の脳メカニズムの研究をfMRIやニューロンレベルのものから、我々の研究室で発展させてきたマイクロダイアリシス法を駆使して、神経伝達物質レベルで調べるものに重点を移して研究を発展させる。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件) 図書 (3件)

  • [雑誌論文] Prefrontal neurons represent winning and losing during competitive video shooting games between monkeys2012

    • 著者名/発表者名
      Hosokawa T., Watanabe M.
    • 雑誌名

      Journal of Neuroscience

      巻: (in press)

    • 査読あり
  • [雑誌論文] デフォルト脳活動2011

    • 著者名/発表者名
      渡辺正孝
    • 雑誌名

      Clinical Neuroscience

      巻: 29(11) ページ: 1314-1315

  • [雑誌論文] 脳活動から見える動物のこころ2011

    • 著者名/発表者名
      渡辺正孝
    • 雑誌名

      動物心理学研究

      巻: 61(2) ページ: 131-139

    • DOI

      DOI:10.2502/janip.61.2.1

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Do monkeys think? Default brain activity in humans and nonhuman primates2011

    • 著者名/発表者名
      Watanabe M
    • 雑誌名

      Behavioral Brain Research

      巻: 221 ページ: 295.303

    • DOI

      DOI:10.1016/j.bbr.2011.02.032

    • 査読あり
  • [学会発表] Oral administration of methylphenidate increases dopamine release in the prefrontal cortex and striatum in the monkey-a microdialysis study2011

    • 著者名/発表者名
      Kojima, T., Kodama, T., Honda, Y., Hosokawa, T., Watanabe M.
    • 学会等名
      Society for Neuroscience Meeting
    • 発表場所
      Washington DC, USA
    • 年月日
      2011-11-14
  • [学会発表] サルにおけるデフォルト脳活動2011

    • 著者名/発表者名
      渡辺正孝
    • 学会等名
      生理研社会神経科学研究会「今、社会神経科学研究に求められていること」
    • 発表場所
      岡崎、生理学研究所(招待講演)
    • 年月日
      2011-10-08
  • [学会発表] 行動の認知科学と前頭前野の働き2011

    • 著者名/発表者名
      渡辺正孝
    • 学会等名
      臨床作業療法研究会「前頭前野機能の理解と認知リハビリテーション」
    • 発表場所
      大阪、御堂会館(招待講演)
    • 年月日
      2011-08-07
  • [図書] サルに内的思考過程は存在するか?-サルにおけるデフォルト脳活動シリーズ社会脳、第1巻、「社会神経科学の展望-脳から社会をみる」2012

    • 著者名/発表者名
      渡辺正孝
    • 総ページ数
      17
    • 出版者
      新曜社
  • [図書] Cognitive and Motivational Control of Behavior and the Primate Prefrontal Cortex. In Principles of Frontal Lobe Function, 2nd Edition(Stuss DT & Knight RT (eds.))2012

    • 著者名/発表者名
      Watanabe M.
    • 出版者
      Oxford University Press(in press)
  • [図書] 行動の機構-脳メカニズムから心理学へ(D.O.ヘッブ著)翻訳2011

    • 著者名/発表者名
      鹿取廣人, 金城辰夫, 鈴木光太郎, 鳥居修晃, 渡辺正孝
    • 総ページ数
      72(翻訳担当分)
    • 出版者
      岩波書店

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公開日: 2013-06-26  

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