研究課題/領域番号 |
22330206
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
竹内 龍人 日本女子大学, 人間社会学部, 教授 (50396165)
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研究分担者 |
今井 久登 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (70292737)
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キーワード | 視知覚 / 順応 / 瞳孔反応 / 自律神経系 / 運動視 |
研究概要 |
本研究では、中枢と末梢の両神経系に制御された全身体的反応である自律神経系(瞳孔反応)に注目し、視覚的体験による身体反応の変容とその変容の視知覚への影響を実験的に推定することを目的とした。二年目である本年度は、以下の成果を得た。 (1)視覚探索の知覚学習中に瞳孔径を測定した。視覚探索の効率性は学習時間に応じて単調に増加する一方で、自律神経反応である瞳孔径の学習曲線は、このような行動指標(反応時間)とは全く異なる形状をしていることを見出した(国際学術誌1件)。この結果は、知覚学習において、自律神経系の反応は行動指標とは全く異なる側面を表現していることを示しており、その実態の解明に向けた研究が必要である。 (2)閾下へ無意味図形のような視覚刺激を繰り返し提示する閾下学習を行ったところ、刺激の提示に対応して瞳孔反応が変動することを実験的に示した。瞳孔径は学習が進むにつれて縮小したが、この学習曲線(縮小率)の減衰が大きいほど、提示された閾下視覚刺激への選好度が高まることを発見した(国際会議2件)。 (3)閾下へ情動成分を持つ顔刺激を繰り返し提示する学習を閾上と閾下で行った。その結果、閾上ではこれまで知られているとおり強度成分に依存した瞳孔反応が現れたが、閾下ではその逆に感情価に依存した瞳孔反応が生じた(国際会議1件)。この結果は、たとえ同じ視覚刺激であっても、その刺激が持つ情動成分により自律神経反応の出現が閾上と閾下では異なることを示している。 (4)明暗順応により瞳孔径が変調された時に、視覚運動知覚の時空間特性が変容することを見いだした。この結果は、瞳孔径の変調に伴い視知覚が定量的のみならず定性的に変化する可能性を示している(国内学術誌2件)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究体制が整ったことにより、研究はおおむね順調に進展している。新しい研究成果が複数得られており、その中のいくつかの内容はすでに査読付き論文として2本刊行されている。また、その他に現在査読中の論文が2本ある。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である2012年度は、実験計画で策定した実験(主に高次認知に関する点)を遂行すると共に、これまで得られた研究成果を査読付き論文(2本)としてまとめることを目標とする。実験の実施については過去の2年間により効率的に行う体制を確立したために、最終年度も恙なく遂行できると考えられる。
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