研究概要 |
本年度は,第1に理論的・方法論的検討,第2に実証的分析の2点を実施した。 理論的検討では,政治学・社会学における新制度論の研究動向と,その教育制度研究への示唆を検討した。新制度論の分析視角は教育制度研究にとって重要であると同時に,教育制度研究が新制度論に貢献できる点があることを明らかにした(村上2010論文)。方法論的検討に関しては,教育政策研究における規範性と実証性との関係再構築に向けての課題と方法について吟味した。実践的な関心を有する政策・制度研究の新たなモデルについて一つの方向性を提示した(荻原2010論文)。 実証分析に関連しては,まず国レベルでは2000年前後の構造改革期と政権交代後における教育改革動向の比較検討を行った。自治体レベルでは,近年の地方政治の構造的変容により,教育政策における首長の影響力が顕在化しつつあり,その政策意図もより明確になってきていることを明らかにした。また,首長の政治的リーダーシップと教育委員会制度をめぐる政策選考との間には密接な関連があることを実証分析により示した(村上2010単著)。市町村と学校のレベルに関しては,市町村合併が教育行政と学校にどのようなインパクトを与えたのかについて調査を行った。これら調査データを用いて、自治体広域化が教員人事行政(採用・研修・異動のほか日常の業務等)にどのようなインパクトを与えたのかについて明らかにした(川上2010日本教育行政学会報告ほか)。同様に,学校管理職の昇進選抜に与えた影響についても明らかにした(川上論文,苅谷他編2010所収)。
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