研究概要 |
本年度は次の2点を中心として研究を進めた。1)近年の改革課題や国・自治体における政策動向に関連した歴史分析と現状分析,および2)教育政策研究における分析枠組みや方法論に関する検討。 主たる研究成果の概要は以下の通りである。 1-1)国レベルの分析に関しては,過去四半世紀の日本の教育制度の展開と近年におけるその構造的変容の特質を明らかにしながら,今後の展望を探った(荻原2011)。また,教員免許更新制を事例として,民主党と自民党の両政権における教育政策決定過程の比較分析を行った(Murakami,2012)。 1-2)自治体レベルについては,近年の首長主導の教育改革はなぜ,どのようにして起こったのか,またそこでの課題や問題点は何かについて,大阪府・大阪市の事例などを通して検討した(村上2011)。 加えて,教育と福祉との境界領域や他の政策領域の事例を通じて,政策領域の外部環境が内部環境に与える影響について検討した(村上2011)。 1-3)学校と自治体の関係レベルについては,近年の地方分権改革がもたらした変化について,教員人事をめぐる制度運用とその動態分析を通して明らかにした。さらに市町村合併にともなう自治体の機構再編が,人事運用に及ぼす影響について検討した(川上2011)。 2)分析枠組み・方法論に関しては,各レベルの事象を総合的に捉える視点・枠組みについて検討した。本年度は,政策の内部環境と外部環壌という枠組みを用いて,近年の改革事例をどう理解するかについて考察し,その成果を3名の共同研究として学会発表した(荻原・村上・川上2011)。また,実証的な教育政策研究における事例分析の方法論的課題について検討を行った(村上2011)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国,自治体,学校レベルのそれぞれについて,固有の課題を明らかにした上で理論的・実証的検討を着実に蓄積し,論文等を発表している。さらに,本年度は各レベルの分析をどう統合的に理解できるかに関しても学会で共同研究の成果を発表した。研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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