3年間計画の初年度にあたる本年度は、計画通り第二次世界大戦関連の博物館を訪問調査し、各館における教育の実態の把握を行うとともに、学会での研究成果発表を行った。まず6月にヘブライ大学(イスラエル)のBaruch Schwarz教授・Dan Porat教授と面談し、同国における第二次世界大戦、特にホロコーストの歴史に関する教育の戦後の動向について調査した。また、同国・エルサレム市にある世界最大級のホロコースト記念館であるヤド・ヴァシェムで開催された国際ホロコースト会議に出席するとともに、同館が幅広い社会・年齢層や地理的地域に提供する多様な教育プログラムについて、その基本理念や方法を調査した。8月にはウプサラ大学(スウェーデン)で開かれたヨーロッパ比較教育学会で、本研究の素地的研究・問題設定等について発表した。11月には、これも世界最大級であるワシントンDCにある米ホロコースト記念博物館で教育担当者へのインタビューを行うとともに、同国ノースカロライナ州の中等学校歴史教員の同館での研修にも同行し、米国の学校教育におけるホロコーストと第二次世界大戦の位置づけについてもその一側面を捉えることができた。今年度の主な現地調査の最後に、韓国で博物館教育の第一人者で関連協会の理事でもあるKim In Whoe教授(元延世大学)の導きで、旧日本軍が使用していた西大門刑務所や戦争博物館で職員へのインタビューを行った。また2月に訪問調査を行った広島平和記念資料館では、国内の戦争関連歴史博物館の中では比較的充実した教育プログラムと、とりわけ日本では数少ない展示や出版物の内容に関する専門家による検証体制について把握できたことは大きな成果のひとつであった。
|