高等教育における学習成果(アウトカム)の評価に関する国際比較調査として、OECDによるAHELOの試行的調査が平成22年度から計画された。この調査をふまえて、高等教育における学習成果の評価にかかわる研究を深化させ、高等教育の質保証や教育改善において、各国政府ないし個別大学がAHELOのような調査をどのように活用するべきかを考察して、日本におけるあり方を提言する。 1.高等教育における学習成果の評価について、先行事例となるアメリカの大学を訪問調査した。それらの大学では、学習成果に関する全学的な評価枠組みの整備、小規模大学においては学士課程の全体を通した学生ごとの学習計画の立案、教員養成などの職業志向の課程においては職業の特色をふまえた学生指導などがなされていた。 2.一方、欧州では、教育課程の目標と教育活動(教育環境、教育内容、教員の資質能力など)の整合性をはかることによって質保証をすすめる方向が打ち出され、世界的に注目されている。 3.AHELOへの参加理由については、自国の高等教育の水準の高さを世界に示したいといった強い意欲をもつ国がいくつかみられた。大学生を対象とした全国的な卒業試験を実施している国では、その結果とAHELOの結果を比較して自国の水準を確認するとしていた。AHELOを契機として大学生を対象とした全国的な学力調査を計画している国もあった。これらとは対照的に、大学や学生の関心が低く、結果として回収率が高まらない国があった。 4.質保証の方式として、教育課程の目標と教育活動の整合性の確保、評価枠組みの整備、学習成果の直接測定などの適切な組み合わせを考える必要がある。学習成果の直接測定を定期的に実施すれば、問題作成を含めて大きな負担が実施主体におよぶ可能性がある。先行事例を参照しつつ、効果と負担の均衡についても検討する必要があろう。
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