研究課題/領域番号 |
22330248
|
研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
豊田 充崇 和歌山大学, 教育学部, 准教授 (60346327)
|
研究分担者 |
中川 一史 放送大学, 教育支援センター, 教授 (80322113)
|
キーワード | 情報モラル教育 / 教育用SNS / 情報活用能力 / モバイル端末 / インターネット / ケータイ / 教科指導モデル |
研究概要 |
まず「調査活動」としては、既存の各社小学校教科書単元からの情報モラル指導要素の抽出/情報モラル指導の実態把握と先行実践事例の分類/児童らのネット利用の実態把握/既存の情報モラル授業の分析と教科学習への適応性の検討をおこなった。また、小・中学生のネット利用の実態調査も各種実施し、現状の把握に努めた。 研究実績は大きく分けて以下の2点が挙げられる。 1.情報モラル指導のためのモデル授業の先行実践と検証(普通教室での教科学習においてグループ学習形態にて情報機器を活用する事例や、個別にモバイル端末を活用して情報発信する創作的な学習活動等を先行的に実践した。) 2.子ども用SNS(Social Networking Service)の設計:既存SNSシステムを子ども・教育向けにカスタマイズし、安全で且つ学習目的を持った公的な教育用ネットワークシステムを開発。次年度のモデル授業での活用や、一般校での利用を促し、その学習効果を検証した。 上記1.のモデル授業の先行実践では、教科学習に情報モラルの指導要素を意図して盛り込んだ実践(従来型授業に、情報モラルの指導要素を加えた事例)をはじめ児童一人ひとりにモバイル端末を配布した新しい形態の学習活動を実施してきた。主に、情報の発信・表現に力点を置くことで、その授業過程の中で「情報モラル」を育成する事例が中心となった。なお、2011年3月末に予定していた公開研究会(東京)が震災余波にて中止となった為、同年7月17日に和歌山にて研究成果の一端を公開した。体験型ワークショップも取り入れ、教員研修モデルの策定にもつなげた。 案内URL http://www.wakayama-u.ac.jp/~toyoda/717/
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
教育現場での実践研究メンバーの異動等もあり、当初の予定よりも実践事例収集の数は少ないが、国語、社会科をはじめ生活科や理科においてもバリエーション豊かな実践事例が蓄積されつつある(15事例程度)。 これらの事例は、普段の授業における教科書単元に、少しの工夫・配慮を加えるだけで、いわゆる「情報モラル」の指導につながる事例から、ネットワークによる学校間交流を前提として授業設計した事例まで多岐に渡る。 また、もう1つの当研究の大きな特色である「学校教育での利用に特化したSNS」においても、その初期バージョンの開発を終えて、平成23年度末には試行段階に入った。 平成24年度には、検証校での運用に入っており、実際の教育現場での実践的な活用 運用に至るまでのプロセスが確立され、学校教育現場への導入におけるノウハウが蓄積されつつある。さらに、実際の教科指導での活用事例も出てきた。同時に、児童用としての問題・改善点も抽出されてきており、今後予定している次期開発バージョン(最終公開版)についての設計に活かしていきたいと考えている。 以上のような理由から、当初予定の実践事例の数までは達成されていないが、研究の流れは概ね順調であると判断している。
|
今後の研究の推進方策 |
子どもらを取り巻くネット事情はわずか1年でも激変しており、スマートフォンの普及が小学生にも及んだり、小・中学生のオンラインゲームやSNSの利用も急増している。 そういった中、やはり「対処療法的な情報モラル教育」つまりネット上の問題やトラブルを避けたり、危険性を周知するような形態の授業では、今の子どもたちが成長した際のネット事情に対応できないことが予想される。よって、技術や情報手段が変化しても対応できる能力が必要とされている。 よって当研究では、従来の教科指導の枠組みの中で、積極的に情報メディアを活用し、他者との交流手段として用いることで、情報を創作・発信できるような授業実践に改善していける事例を開発する予定である。また、そういった授業を支えるシステムとして、教育利用に特化した「子ども用SNS」の開発とその活用事例も積み上げる予定である。
|