研究概要 |
本研究は,日本と韓国の社会科教育史研究者の共同研究体制によって,両国における市民性が,学校教育の中で過去にどのように育成されてきたか,そして現在ではどのように形成されようとしているかを,両国のカリキュラムと授業実践を中心に他国の動向も視野に入れながら,比較と歴史の視点から明らかにするとともに,その知見を活用した両国共通の新たな市民性カリキュラムの開発までを目的とするものである。 最終年度となる本年度には,日本と韓国及びドイツでの3回の研究委員会とワーキング会議及び現地調査を行いながら,日韓両国の社会科における市民性育成の現状と経緯に関する検討結果の整理を経て,2012年9月と11月には日韓連続シンポジウムを開催した。大韓民国慶尚大学校での韓国シンポジウムにおいては,日韓両国のメンバーとともに中国の研究協力者にも登壇いただき,「東アジア市民性教育の変遷-日韓中の社会認識教育を中心に-」をテーマに研究成果の報告と幅広い議論を行った。続く立命館大学での日本シンポジウムでも日韓両国のメンバーに加えて英国の研究協力者を招聘して,「市民性教育の歴史的転回-日韓英の地理・歴史・公民教育を中心に-」をテーマに引き続き,研究成果の報告と連続的な議論を展開した。 最終的には,三年間の研究の成果として,全6章からなる研究報告書の作成も行った。報告書の内容は,日本と韓国における市民性と資質育成の歴史的検討,米国・英国・中国における市民性と資質育成の歴史的検討,市民性調査における日本と韓国の子どもたちの市民性の結果と分析,変遷と比較から考える今後の日本と韓国の市民性カリキュラムのあり方,の4点について特に重点的に研究の成果を整理した。
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