研究課題/領域番号 |
22330253
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
武村 政春 東京理科大学, 理学部, 准教授 (50303623)
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研究分担者 |
山野井 貴浩 白鴎大学, 教育学部, 非常勤講師 (40567187)
佐倉 統 東京大学, 情報学環, 教授 (00251752)
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キーワード | 生物教育学 / DNA複製 / 教材開発 / 進化教育 / 分子生物学教育 / 分子系統樹 / 有袋類 / 有胎盤類 |
研究概要 |
本研究は、中等教育の現場や科学コミュニケーションの現場においてすぐにでも役立つ、斬新でユニークな分子生物学ならびに進化学に関する教材開発ならびに新しい科学コミュニケーション法の開発を目指している。平成23年度は、この目的に沿った4つのテーマのうち、次のテーマについて研究を行った。 ●生物多様性創出の理解を促進するための分子生物学教材の開発研究 平成22年度に引き続き、ゲノム情報活用実験教材として、両ゲノムから両種に共通する遺伝子のセットを取り出し、それらの塩基配列を網羅的に比較解析するなどして、有胎盤類と有袋類の進化の流れを体験できる教材の開発を行うことを目的として研究を行った。平成23年度は、有袋類細胞(OK細胞)を培養し、mRNAを抽出した後にcDNAライブラリーを構築し、これを鋳型としてDNAポリメラーゼα遺伝子のサブクローニングを試みた。 ●人間のための生物学教育の充実と新しい科学コミュニケーション法の確立 遺伝子組換え、DNA鑑定、DNA診断を、遺伝子のはたらきを通じて理解できる教材の開発を目的として、平成23年度はまず、遺伝子がどのように発現し、タンパク質を作り上げるか、すなわちDNA→RNA→タンパク質(セントラルドグマ)の流れがわかりやすく生徒に理解できるモデル教材の開発を行うための質問紙調査を行った。また、バナナからDNAを抽出する簡単な実験をベースとし、遺伝子組換えやDNA診断などの身近な社会問題に興味・関心を惹くような斬新な生徒実習法の開発を目的として、実験開発を行った。 ●分子系統樹作成を基本とする分子進化教材の開発研究 身近な野菜を用いて、分子時計が一定と考えられているRuBisCO遺伝子の一部塩基配列をPCR法を用いて増幅し、増幅した塩基配列のシークエンス解析を行った。また分子系統樹作成ソフトウェアを用いて分子系統樹を作成し、野菜の分類学上の系統関係が反映されるかどうかを確認した上で、この一連の流れを教材化するために、フローチャートを作成した。さらに、高校生に、データベースから塩基配列をダウンロードし、分子系統樹を作らせる授業実践を行い、教育効果を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「●人間のための生物学教育の充実と新しい科学コミュニケーション法の確立」ならびに「●分子系統樹作成を基本とする分子進化教材の開発研究」については、交付申請書に記載した「研究の目的」ならびに「研究実施計画」通りに進展しており、特に後者に関しては当初の計画以上に進展している。しかし、「●生物多様性創出の理解を促進するための分子生物学教材の開発研究」に関しては、分子生物学的手法の進展が思ったより進んでおらず、当初計画に入っていたDNAの突然変異に関するモデル教材開発が遅れている。以上のことから、研究計画全体に関して言えば「(2)おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
上記「現在までの達成度」において述べたように、とりわけ「●生物多様性創出の理解を促進するための分子生物学教材の開発研究」テーマにおける研究進捗状況がかんばしくないことから、分子生物学的手法の見直しも含めて、研究方法を改良していく必要があると考えられるが、その他の研究テーマについては研究進展が良好であることから、このまま当初の計画通りに進めていくこととする。
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