本研究の目的は、視覚に障害のある児童生徒に適した拡大教科書を選定するための検査バッテリーと普及・啓発を促進するための教材と研修プログラムを開発することである。児童生徒の視機能や他の障害の有無だけでなく、学習環境、発達段階、補助具等の操作能力等を評価するための検査バッテリー、拡大教科書の選定支援をするためのエキスパートシステム、特別支援学校等に本システムを普及させるための教材・研修プログラムを開発し、必要な児童生徒に適切な拡大教科書が無駄なく、安定して給与されることを目指している。 本年度は、まず、様々な学校現場での教科書の活用場面に関して調査を実施した。弱視児童生徒が在籍している盲学校、弱視特別支援学級、弱視通級指導教室において、拡大教科書がどのように活用されているかを郵送方式のアンケート及び訪問によるヒアリングで調査した。盲学校高等部の調査では約7割の生徒が拡大教科書を利用していることがわかった。また、通常学級調査には636名、弱視特別支援学級調査には138名、弱視通級指導教室には97名の弱視児童生徒が拡大教科書を利用していることがわかった。次に、どのような拡大教科書がどのような方法で作成されているかを教科書発行者とボランティアを対象に調査した。教科書発行者では18、22、26ポイントのレイアウト変更方式(小中学校)と14ポイント程度の単純拡大方式(高等学校)を、ボランティアは個別対応のプライベートサービス方式を中心に作成していることがわかった。また、フォントにはゴシック体を使っているケースが多いことがわかった。
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