研究概要 |
本研究では,全盲・重度弱視・発達性読字障害(Dyslexia)など様々な形で視覚に障害を持つ児童・生徒が,インクルーシブな教育環境で晴眼者と同じ科学教材を容易に共有できるようにするため,数式・表・グラフ・図などさまざまな特殊表記・特殊記号を含む科学コンテンツをバリアフリーな形に自動変換するシステムの研究開発を行う。 本研究は大別して,A.理数系対応DAISY編集・閲覧ソフトウェア開発,B.DAISY対応数式OCRシステム開発の2つの部分から構成される。それぞれに関する本年度の研究成果は次の通りである。 Aグループ:山口(日大),川根(同),駒田(同) 先行課題研究で開発してきた音声出力機能付き数学文書エディタを土台として,理数系コンテンツを扱うことのできるテキストDAISY編集・閲覧ソフトウェアを試作した。このソフトウェアは従来の数式エディタの機能をすべて持つ以外に,DAISYのインデックス機能や強調表示機能,読み上げ・ハイライト連動機能等を持ち,全盲だけでなく重度弱視や発達性読字障害の人にも利用できる。さらにメニューやダイアローグを日本語・英語以外の言語に容易に変換できるようにする機能を実装し,表編集・読み上げ機能も強化した。また,作成した理数系テキストDAISYコンテンツにおいて,専門用語・数式に正しい読みを与える方法を提案・実装し,さらに音声合成を利用して音声DAISYとして出力する技術開発にも取り組んだ。 Bグループ:鈴木(九大),金堀(筑波技大) 先行課題研究で開発してきた数式OCR技術を改良し,研究協力者であるJ.ガードナー博士らの協力の下に,理数系書籍に数多く含まれる図・グラフ中の数式を自動認識した上,MathML形式に変換してSVG形式の図・グラフ中に埋め込むシステムを試作した。これにより,DAISY電子書籍中の図をアクセシブルにするための道が開かれた。また,数式を含む複雑な表の認識技術についてさまざまな改良を行った。
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