研究概要 |
本研究では,全盲・重度弱視・発達性読字障害(Dyslexia)など様々な形で視覚に障害を持つ児童・生徒が,インクルーシブな教育環境で晴眼者と同じ科学教材を容易に共有できるようにするため,数式・表・グラフ・図などさまざまな特殊表記・特殊記号を含む科学コンテンツをバリアフリーな形に自動変換するシステムの研究開発を行う。 本研究は大別して,A.理数系対応DAISY編集・閲覧ソフトウェア開発,B.DAISY対応数式OCRシステム開発の2つの部分から構成される。A.について本年度は日本点字図書館の研究協力者等の協力を得て,(1)中等教育における数式読み上げ法の標準化の検討,(2)日本語DAISYにおいて,音声合成の読み誤り,息継ぎ・抑揚等を修正する新たなインターフェースの開発を行うとともに,(3)昨年試作したDAISY編集・閲覧ソフトウェアの改良を行った。B.については(1)中等教育の理数系教科書で最近多く利用される複雑なレイアウトのOCR解析技術,(2)拡張ラテン文字を使用する英語以外の欧州諸言語の認識精度向上等の研究を実施した。 さらに平成24年2月8日~10日に日本大学理工学部駿河台校舎を会場として,国際研究集会"Digitization and E-lnclusion in Mathematics and Science 2012(DEIMS12)"を主催し,海外からの参加者10名を含め,本課題研究に関連する20余件の研究発表・成果報告を受けた。本課題研究の成果も"Problems in Producing Japanese DAISY Mathematical Content and a Solution for Them"の標題で報告し,本研究の今後の方向性について参加者と検討するとともに,来年度以降の研究協力について打ち合わせを行った。
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今後の研究の推進方策 |
本年度基礎研究を実施した,複雑なレイアウトの教科書を可能な限り自動的に認識するための解析技術を数式OCRシステムに組み込み,それを用いて実際の理数系教科書を対象とした評価実験を行い,その結果に基づいて一層の改良を図る。また全盲・重度弱視・発達性読字障害のモニター生徒を対象として,試作した理数系DAISY教科書の評価実験を実施し,その結果に基づいてDAISY編集・閲覧ソフトウェアの読み上げ機能等の改良を図る。本年度主催した国際研究集会DEIMS12参加者の協力を得て,同ソフトウェアの多言語化にも取り組む。
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