研究課題/領域番号 |
22340002
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
宮本 雅彦 筑波大学, 数理物質系, 教授 (30125356)
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キーワード | 頂点作用素代数 / 2次元共形場理論 / C2有限性 / フュージョン積 / C1有限性 / ムーンシャイン予想 / フレイム頂点作用素代数 / 置換頂点作用素代数 |
研究概要 |
頂点作用素代数は2次元共形場理論を代数的に取り扱ったものである。2次元共形場理論において重要な問題の一つは、良い性質を持つ新しい2次元共形場理論を構成することである。加群がすべて分類可能である等の良い性質(例えば、加群がすべて完全可約)を持つと期待される構成法の一つに、既存の良い性質を持つ頂点作用素代数から自己同型群を使って、固定点全体として構成する方法(オービフォルド模型)がある。本研究ではまず、これまでのフュージョン積の定義を交絡作用素を使ったものとして理解することで、そのオービフォルド模型においてもC2有限性が保たれることを示した(6月に北京大学で発表)。 さらに、より弱い条件(C1有限性)でもフュージョン積が定義可能であることを示し、存在が予想されていた全く新しい頂点作用素代数が構成できた(シュレケンスの予想リスト34番目)。この結果はプレプリントサーバーに投稿されており、ドイツで開催される国際研究集会(9月)において発表した。この方法により非常に多くの頂点作用素代数が構成できるが、その構造を調べることは簡単ではなく、有限自己同型を持つ有限次元リー代数との決定問題にも繋がり、新しい問題を生み出している(この結果はリオンで発表12月)。また、位数3以外の素数位数の自己同型に対しては、C1有限性が成り立つことが分かって来ており、その条件の下でのオービフォルド理論の構成も可能であることが示された。この結果は、台湾で開催された国際研究集会(12月)で発表しており、バロン氏などその方面の研究者から高い評価を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究の目的のうち、位数3に関する軌道構成は成功した。それ以外の位数に関する軌道構成はC1有限性の下で、非常に良い結果を得ている。しかも、この分野に関係した著名な研究者から、その弱い結果の下での構成の方が有益であるとのコメントをいただいており、広い意味で大きく進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
上記の達成度で説明したように、目的通りの強い結果を求める方向と、弱い結果(C1有限性)の下で、軌道構成を成功させる方向との、.2つの方向で最終年度を進める。また、9月に日本で国際研究集会を開催し、この方面の研究者を招待して、議論を深める。
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