頂点作用素代数は最大の散在型有限単純群であるモンスター単純群に纏わる神秘を証明するために、ボーチャーズによって導入された無限次元の代数であるが、同時に現代では、物理における2次元共形場理論を数学的かつ代数的に取り扱ったものと理解されている。個々の頂点作用素代数が一つの場の理論を実現しているわけであり、その構成は非常に難しい問題である。現時点では、出発となる頂点作用素代数で無限系列となるものとしては、格子を利用した格子頂点作用素代数か、またはリー代数を利用したアフィン頂点作用素代数であり、それを変形して新しいものを作るのが一般的である。その方法も、部分頂点作用素代数を見つけるか、そのコミュタント、およびシンプルカレント構成以外には余り見つかっていない。特に、有名なムーンシャイン頂点作用素代数のような、ホロモルフィックと呼ばれる既約加群が一つしかないものの構成は大きな問題の一つとなっている。そのような頂点作用素代数を構成できるのではないかと期待されている方法の一つが軌道理論である。これは既知の頂点作用素代数とその自己同型群を使って、新しい頂点作用素代数を構成する方法であるが、これが可能となるのは、研究代表者によって示されたように自己同型による固定部分代数がC2有限性を満たすことが必要である。それゆえ、簡単に、既知の頂点作用素代数がC2余有限なら、有限自己同型による固定部分代数もC2余有限ではないかという予想が考えられている。これは、初期の2次元共形場理論において予想されて軌道予想を現代的に解釈したものと理解できる。本研究では、この軌道予想が巡回自己同型群に対して正しいことを証明した。
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