表現論は対称性を研究する数学の一分野である。古典的な群、リー環などを用いた対称性の研究から、量子群、ヘッケ環等の新しい言葉を用いたそれまで扱えなかった対称性の研究へと、その研究の領域が拡大している。これらの表現論における新しい方向をさらに進めて、代数・幾何等を総合的に用いた研究を行った。又、将来、表現論のみならず他分野にも応用の見込まれる、ホロノミー系と帰納層の拡張問題を解決した。また不確定特異点型ホロノミック系に対するリーマン・ヒルベルト対応を帰納層の概念を用いることにより、定式化することに成功した。さらに具体的には次のような成果があがった。
1. 箙超代数は、研究者が先に導入したものであるが、これを用いて、量子群の超圏化を行うことに成功した。 2. ホロノミー加群の台はラグランジュ多様体であるが、超局所的には、ホロノミー加群間の射は余次元2の部分集合の外で決まってしまう。これの延長として、 ラグランジュ多様体の余次元3の部分集合の外で定義されたホロノミー加群は常に拡張できると予想されていた。この(余次元3)予想を肯定的に解決した(K.Vilonen氏との共同研究)。これは将来、表現論に応用を持つと期待される。 3. ポワッソン多様体の構造層の変形量子化に対して、そのホッシシュルドホモロジーを用いてトレース公式、標数公式を定式化した。
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