研究概要 |
凸多面体の組合せ論の伝統的な話題である「凸多面体の面の数え上}」及び「凸多面体の三角形分割の構造」が本基盤研究の研究対象である。これらの研究の推進には、純粋な組合せ論のテクニックに加え、代数的なテクニックが不可欠である。本基盤研究の目的は、これらの伝統的な話題に関する幾つかの未解決問題に挑戦する戦略の礎となるグレブナー基底の代数的基礎理論を構築することである。 平成22年度は、有限グラフに付随するトーリックイデアルのイニシャルイデアルと隣接2-minorが生成するイデアルのイニシャルイデアルに関する具象的研究を展開した。 前者の研究は、日本学術振興会のサマープログラムの援助で大阪大学に滞在していた大学院生Augustine B.O'Keefeを海外共同研究者に加え、7≦f≦dとなる任意の整数fとdが与えられたとき、d個の頂点を持つ有限グラフGで、そのedge ring K[G]の次元がdで、深度がfとなるものを構成したが、深度の下限を評価する際、グレブナー基底とイニシャルイデアルのテクニックがきわめて有効であった。投稿中の論文は[T.Hibi,A.Higashitani,K.Kimura and A.B.0'Keefe,Depth of edge rings arising from finite graphs,arXiv : 1009.1472]に載せ、公開している。 後者の研究は、海外共同研究者Jurgen Herzogとの共同研究として実施し、隣接2-minorが生成するイデアルが素イデアルになるための条件、二次のグレブナー基底を持つための条件などを得た。加えて、隣接2-minorが生成するイデアルの根基イデアルの準素分解を具体的に構成することに成功した。投稿中の論文は、[J.Herzog and T.Hibi,Ideals generated by adjacent 2-minors,arXiv : 1012.5789]に載せ、公開している。
|