研究課題/領域番号 |
22340011
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
泉屋 周一 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80127422)
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研究分担者 |
大本 亨 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20264400)
石川 剛郎 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50176161)
利根川 吉廣 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80296748)
寺尾 宏明 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90119058)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ローレンツ空間形 / 光的超曲面 / 事象の地平線 / 特異点 |
研究概要 |
平成24年度は、相対性理論や素粒子物理学において重要な役割を担う3種類のローレンツ空間形の一般次元の空間的部分多様体に沿った光的超曲面の特異点の幾何学的性質についての研究を実施した。ローレンツ空間形とは、定曲率をもつローレンツ多様体のことであり、曲率零の場合が、ミンコフスキー空間、曲率正の場合がド・ジッター空間、曲率負の場合が反ド・ジッター空間と呼ばれる空間である。最初に、最も単純なミンコフスキー空間内の空間的部分多様体について考えた。この場合は、特殊相対性理論に対応していて、重力が存在しない場合であるが、理論物理学における素粒子論のゲージ場などはこの空間で記述される場合がおおい。また、単純なモデルと考えることができる。この場合に以前に研究していた、余次元2の場合の理論を適用するために、一般の空間的部分多様体にたいして、余次元2管状空間的多様体という新しい概念を導入し、その上で従来の余次元2の場合の理論を適用することにより、元々の空間的部分多様体に付随した光的超曲面を記述することが可能となった。この場合、光的超曲面は様々な事象の地平線のモデルとなり、特異点の形状を記述することは事象の地平線がどのように観測されるかという事を理論的に導くことに対応している。次に、理論物理学において近年盛んに研究されている反ド・ジッター空間内の空間的部分多様体に沿った光的超曲面の特異点とその幾何学的性質について考察した。この場合は、他の2種類のローレンツ空間形とは、コーシー地平面が存在するという顕著な違いがあり、コーシー地平面は光的超曲面となり、その研究は重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ローレンツ空間形という相対性理論や素粒子物理学で近年活発に研究されているローレンツ多様体内の光的超曲面の特異点は、非線形現象に現れる幾何学的特異点の典型的な例であり、その特異点の研究は、物理学的にも重要であるが、そこから対応する空間的部分多様体の不変量が発見され、数学的にも新しい研究成果であり、その幾何学的性質を研究するという当初の目的達成のために、概ね順調に研究が推進されていると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は最終年度にあたるので、今まで得られた成果に沿い、ローレンツ空間形内の光的超曲面の特異点の幾何学的性質について研究を推進する。さらに、より一般の場合を想定し、定曲率とは限らないローレンツ多様体の空間的部分多様体に沿った光的超曲面の特異点の研究に取りかかる。この場合、ローレンツ空間形の場合に強力な道具となった、高さ関数族や距離関数族が使えないと思われるので、一階偏微分方程式の幾何学的理論である特性曲線の方法を対応するアイコナール方程式に適用することを試みる。
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