研究概要 |
コンパクト非Kahler複素曲面に上に反自己双対双エルミート計量が存在すれば,その反標準因子は,正かつ非連結であることが知られている.このことから,曲面が極小であればそれらは,対角型ホップ曲面(m=0)か,放物型井上曲面m≧1)か,双曲型井上曲面(m≧2)のいずれかであることがしたがい,一般には,以上のいずれかの曲面を反標準因子上の有限個の点でblowing upしたものになる.ただしmは曲面の二次ベッチ数である.mを固定したときこれらの曲面はすべて変形でつながっている.従来知られていた反自己双対双エルミート計量は,対角型ホップ曲面に対する標準例とLeBrun('91)によるある種のblown-up Hopf曲面,および放物型井上曲面のみであった.本研究では,任意の双曲型井上曲面およびその任意のproper blowing upに対し,その反標準因子を保つ任意の微小変形に対し反自己双対双エルミート計量が存在することを示した.しかもここで構成された族は,反自己双対双エルミート計量の族は変形の意味で普遍的である.また,双エルミート構造に付随する二つの双曲型井上曲面は互いにその転置になっていること,放物型曲面の場合には,互いに同型かまたはその複素共役になっていることが示される.Gualtieriにより,このような双エルミート構造は,一般化されたtwisted Kahler構造と対応し,そのような新しい例をも提供しておりその方面からも興味が持たれている.我々の方法はさらに,必ずしも反自己双対計量から来ない一般のエルミート構造に対しても,生じる二つの複素構造の間の関係をあたえる.
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