研究課題/領域番号 |
22340016
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
神保 雅一 名古屋大学, 情報科学研究科, 教授 (50103049)
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研究分担者 |
金森 敬文 名古屋大学, 情報科学研究科, 准教授 (60334546)
城本 啓介 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (00343666)
三嶋 美和子 岐阜大学, 工学部, 准教授 (00283284)
澤 正憲 名古屋大学, 情報科学研究科, 助教 (50508182)
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キーワード | 離散数学 / 符号 / 量子符号 / 組合せデザイン |
研究概要 |
平成23年度は下記の2つのテーマについて研究を遂行した。 (i)量子ジャンプ符号に基づく新しい組合せ構造およびその暗号などへの応用の研究 今年度は昨年度に引き続き,複素数体上のmutually orthogonal partial t-designs (t-MOD)という概念を提案し,その組合せ構造,存在性,構成法について研究を行った.この概念は、量子ジャンプ符号から導かれた組合せ構造であり、組合せデザインの新しい研究テーマである。今年度は、与えられたパラメータのもとでデザイン数最大の最適なt-MODの存在性に注目し、ある種のパラメータについては最適なt-MODが存在しないことを明らかにした。また、最適なbinary t-MODはlarge set of tdesignと同値であることを示した。さらに、最適なbinary t-MODが存在しないパラメータに対して複素数上の最適なt-MODの存在を示した。本研究グループでは、t-MODの研究の意義と応用および数学的興味深ざをCalifornia工科大学、中国の逝江大学、蘇州大学などの研究集会、セミナーなど国内外の様々な研究集会、セミナーなどでアピールし、大きな反響を得た。 (ii)fingerprint符号などの組合せ論的特徴付けと構成法およびそのgroup testingとの関連と組合せ構造,識別アルゴリズムの開発 本研究ではgroup testingと呼ばれる手法が重要な役割を果たすが,平成23年度は特にgroup testingに注目して、反応抑制アイテムが存在する場合にpositiveアイテムを識別する識別アルゴリズムを開発し、その効率をシミュレーションにより実証した。本研究は、23年4,月に台湾での国際会議でHung-Lin Fu教授との情報交換を契機に始めた研究であり、Fu教授のグループはgroup testingの組合せ論的側面に注目しているのに対して、本研究では、その識別アルゴリズムに焦点を当てて、Belief propagationを用いたアルゴリズムを開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(i)のテーマについては、当初の予想より多くの新しい結果が得られており、これらの結果が、当該分野で注目され始めている。実際、われわれの研究グループの成果が海外の研究者に引用され始めている。今後、このテーマがますます注目されていくことが期待できる。(ii)については、当初、想定していた応用とはすこし異なるが、反応抑制のあるグループテストという新しいテーマの研究成果が得られ、順調に成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
(i)については、現在の研究を、推進させて、最適なt-MODの構成、存在・非存在問題に関するより広い結果を得てゆきたい。また、同時に、t-MODの新しい応用分野についても研究を行っていきたい。たとえば、鍵分散暗号などの分野への応用があることが分かっているが、さらに、量子鍵分散暗号などへの応用も模索してみたい。 (ii)については、平成23年度は反応抑制がある場合のグループテストにおける識別アルゴリズムの開発を行ったが、グループテストの組合せ構造にも注目して、組合せ構造と識別アルゴリズムの両面から識別効率を検討していくことが必要であると思われる。また、そのfingerprint符号への応用についても考えて行きたい。
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