研究課題/領域番号 |
22340019
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤原 彰夫 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30251359)
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研究分担者 |
長岡 浩司 電気通信大学, その他の研究科, 教授 (80192235)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 非可換確率論 / 情報幾何学 / 単調計量 / 双対平坦 / 適応的量子推定 |
研究概要 |
情報幾何学は,確率分布空間が有する自然な微分幾何構造の研究にその起源を持つ,Riemann 計量に関して互いに双対な2つのアファイン接続を有する多様体を研究する分野のことである.本研究の目的は,情報幾何学および量子情報理論の諸分野における断片的研究成果を統合・発展させ,「非可換確率論における情報幾何学的方法」とでも呼ぶべき一般的方法論の体系化をめざすと共に,量子情報科学における新しい問題を発掘し,それらに応用していくことにある. 古典情報幾何学における Fisher 計量とα-接続の絶対的重要性を確立した Centsov の定理の量子版を導くことは未だに未解決であるため,Petz の定理によって特徴づけられる量子単調計量を任意に与え,その計量に関して混合型接続と双対な指数型接続を定義するという双対幾何構造の導入手法が標準的に用いられている.これに対し本研究では,混合型接続自体を絶対視せず,与えられた量子単調計量が何らかの双対平坦構造を許容するか否かという問題を研究した.その結果,Hilbert 空間が2次元の場合ではあるが,従来は捩率を有する計量の典型例と考えられていた SLD 計量も RLD 計量も,共に双対平坦構造を許容するという事実を証明することに成功した.そして特に SLD 計量の場合,量子状態空間の4次元球面への等長埋め込みと,そこから古典確率空間へのリダクションが,双対平坦化を可能としているメカニズムであることも明らかとなった.一方,これと並行して,量子情報科学における情報幾何学的方法の新たな展開を図るため,量子光学の実験物理学者との共同研究を行い,SLD 計量が定める Cramer-Rao 型下界が適応的量子推定法により達成可能であることを世界で初めて実験的に検証した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
単調計量の双対平坦化可能性の研究という全く新しい研究対象を見いだし,非自明で興味深い例も得られている.また実験物理学者との共同研究により,量子情報科学における情報幾何学的方法の応用展開も実現され始めている.
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究で発掘された単調計量の双対平坦化という新しい研究対象の研究を進展させると共に,量子情報科学における新しい問題をさらに発掘していく.
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